エピローグ

⋯おかしい。最近おかしい。


「高梨君」


「は、はい!」


最近、僕の席に毎日一回は佐藤さんが来る。


「100メートル走のタイム13秒だったらしいじゃない」


「はぁ」


「もっと遅く走りなさいよ!!」


「えっと⋯ごめんなさい?」


「⋯モテたらどうすんのよ」


「え?なんか言いました?」


「もう知らない!!」


そう言ってさっそうと佐藤さんは去っていく。あれ以来⋯佐藤さんの手を手当てした時以来佐藤さんの様子が変なのだ。⋯それも僕限定で。


最初は佐藤さんの僕限定の変わりようにクラスメイト達も驚いていたが、今となってはノーリアクション。僕が佐藤さんに急に暴言を吐かれる日々は日常化している。


「⋯やっぱり僕何かしちゃったんですかね⋯」


「いやいや」


そういいながら手を横に振るのはカラオケの時に仲良くなった隼人だ。隼人はあきれを若干にじませながら僕を見る。


「違うだろ。それは⋯」


「いや、でも僕だけ暴言ですよ?最初の頃はそうでもなかったのに⋯。やっぱり僕が何か⋯」


胃がキリキリ痛くなってくる。


「まぁ、俺も佐藤さんがアホの娘だとは知らなかったけど⋯」


「佐藤さんがアホの娘?あの人はむしろ天才のほうに入るでしょう」


勉強方面もそうだけど、なにより人心掌握の仕方が。あそこまで完璧に行うのはすごいと思う。やっぱり委員長に心血注いできたからああいう風になったのだろうか?⋯いや、これは本人の才能という面が大きいかもしれないな。少なくとも僕はできる自信がない。


「⋯そういう意味じゃなくてな。まぁ、いいや。昼食うか」


ごまかされた感じがして納得はできないけど、頷いた。


「うん」



よし⋯上手く今日もできたわね。自分で自分をほめる。今日も高梨君の前でツンデレを演じれた。お兄ちゃんに本かしてもらって勉強したけどこれじゃ足りないかもしれない。帰りにツンデレ少女が出てくる本でも買おうかしら⋯。


ツンデレを演じていることを周りにばれないぐらいに⋯高梨君にばれないぐらいに自分の物にしてみよう。大丈夫だ⋯。自分ならできるはず。だって前も博人君に敵視されるぐらいには⋯執着を持たれるぐらいにはできたんだもの。今回だって⋯。


鏡の中に移っている自分はおさげ姿だ。ツンデレの代名詞らしいツインテールにしてもいいかもしれない。私は自分の髪を結いなおした。鏡に挑発的に笑って見せる。


「さて、人為的ツンデレ少女は好きになってもらえるかしら?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

人為的ツンデレ少女は好きですか?? うっしー @ryumu0x0

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ