構成、題材、ストーリー、キャラクター、どれもが一級品です!

この小説、たくさん魅力があるのですけど、まず、構成が非常に凝っています。タイトルにあるように、ある家族の物語なのですが、家族を構成するメンバーである、お父さん、お母さん、息子、娘、の四人を各々一人称で、しかも並行して描くという手法で書かれています。

ん? どういうこと? と思われた方、とにかく読んでみてください。なるほど、そういうことか~、と納得されると思います。

この方法、ある出来事を多視点で描くことができるという特徴がある反面、登場人物と出来事の時制を完璧に把握していないと訳が分からなくなるという書き手にとっての難しさを抱えています。

でも、この小説はそこを見事にクリアしていて、さらに、同じ出来事が複数視点で繰り返されるくどさをさりげなく回避していたり、かなり高度な技が堪能できます。

そして、単に技巧的に優れているだけではなく、お話としても超面白い! 小説を書くってどういうことなのかというテーマが根底にあるんですけど、良質のエンターテイメントとして、すらすらと読めてしまいます。

家族それぞれのキャラクターの造形も魅力的です。個人的にはお母さんのキャラクターが秀逸で、ほんと、大好きになっちゃいました。むっちゃ可愛いんです。ぜひ、お母さんのスピンオフを作ってほしいです。

とにかく、いろんな魅力が詰まっている小説です。たくさんの人に読んでほしいです。

楽しませてくれますよ!