あかいかわ文学のベースになっているものは「やさしさ」なのかなとふと思った。
少なくとも、この才気に満ちた小説家は人間を愛してやまない人なのだろうと思う。
桜の花のように儚く彩られた無数のシャレードによって物語は展開する。
しかし、せっかく美しく造形されたその物語を、作者は「さっさと散らす」のだ。
その潔さが堪らない。散り舞う桜のただ中に身を置いているようで、ほんとうに堪らない。
この小説のなかで作者は、とても優れた(わかりやすい数学書のような)文学論をも展開している。
物語の主人公のように皆が「空想の物語」を楽しみつくせば、
いずれ、それが「ミサイルにも毒ガスにも打ち勝つ日がやってくる」
私もそう思う。
あかいかわ様の光合成を、陰ながら、微力ながら、応援させていただくことにします。
もう一つ、
「」(かぎかっこ)って使わなくてもイけるんだ…と気づきました。
同一のプロットを基にそれぞれが作品を書くという自主企画の参加作品です。企画の締め切りも近いこの時期にすごいものが投入されました。素晴らしいです。むちゃくちゃ好きです。
ネタバレになるので詳しく書けないのが歯がゆい。でも、あえて書きます。
キャッチコピーにもあるように、空想の物語についての物語です。空想の物語を楽しむために必要なモノってなんでしょう。そのモノの大切さを考えさせられるお話です。
特異な設定にもかかわらず、指定されたプロットを無理なく消化しているところがすごいです。そして、背景や設定を説明しすぎないところも私は好きです。
「」を用いない文体も、主人公の特性と合っていてよかったです。最初私はこの物語は三人称で書くべきなのでは、と思ったのですけど、でも、主人公の一人称で書かれたこの小説を読んだ私が心を動かされたということは、既に主人公は……と、いろいろと深堀りできそうで、これを読んだ人と語り合いたい気持ちになります。
物語ることの大切さについては実は以前に私も書いたことがあるので、余計に楽しめました。
企画があったからこそ生まれた作品で、企画主のゆあん様にも感謝しつつ、企画を超えて幅広くたくさんの人に楽しんでもらいたいと思いました。
必読です!