とにかくギャグパートとシリアスパートの落差が凄い。
が、本来はシリアスなダーク・ファンタジーであるようだ。
ダーク・ファンタジーだからといって、魔王や悪魔が出てくるわけではない。前面に押し出されて本作を秀逸なダーク・ファンタジーと為さしめている要素は、人間の暗黒面。
この作品のアイデンティティーたる人の暗黒面は、やがてストーリーを侵食し、設定を蝕み、あまつさえキャラクターを、さらには読者、作者までをその闇に取り込んでしまう。
本来書き手が、物語やそのキャラクターの狂気に中(あ)てられることは、駄目な創作の例となるはず。だが、本作は作品からバックファイヤーしてきた暗黒が作者の中に宿り、さらなる暗黒を生み出し、得も言われぬ漆黒の余韻を残している。
文体から察するに、あまり多数の作品を書いた作者ではないであろうと推察するが、本作を生み出したものが、計算された狂気であれ、未成熟な書き手によるビギナーズラックであれ、産み落とされた作品の出来には関係のないこと。
本作は、滅多に出会うこと叶わない、禁断禁忌の怪作である。
これはもはやバトルではない。かなりヘビーな「戦争」である。ここまで主人公を過酷な状況に追い込んだ作品は、今まで見たことがない。
ほんのわずかな時間だけ、主人公は貧乏神社の巫女として、また女子高生として、平凡な日常を過ごすが、それはすぐに暗転してしまう。
クラスメイトの美少女によって、父は殺され、ばらされる。それと同時に母親はある掟に刃向い、主人公を連れて逃げたために命を落としていたことが判明する。そして、主人公は特異な血を持つ男だからという理由で、冷酷非道な最強最悪美女と交わることを強要される。その前に、その美女から「地獄」での戦闘を命じられ、クラスメイトと共に「地獄」の使者と命を懸けて戦うことになる。命からがら助かったものの、父を殺した美少女は自分の体は改造されていることを主人公に告白し、主人公の目の前で自殺してしまう。美少女を助けるために主人公は自ら「地獄」行きを決めるが、そこには罠と絶望的状況が待っていた。それでも主人公は、美少女を何とか生き返らせることに成功する。ここまでで一区切りだ。
次からは高校生活が再び描かれているが、序盤に不吉な機密文書の記述から始まっているため、気が抜けない。
この最悪な状況からどのような希望が見いだせるのか。それとも?
これからの展開が楽しみな作品です。
是非、ご一読ください。
重厚な本格派・バトルSF。
その仔細な表現により没頭、気付けば誰もが銃を構え、戦場へ降りたつことだろう。
本作品、設定が非常に練り込まれており複雑かつ魅力的。であるにもかかわらず、その意味は、すっと自然に頭へ叩き込まれている。
この魔法を可能にした仔細で優しい文体。きっと何度も推敲を重ねられて生み出されたものなのだろう。
恐怖感と、その中で戦い、すり減らされる心。
そんな中だからこそ大切にしたい、仲間への想い。
その交錯が実に巧みに絡み合い。
そして心の成長へと昇華する。
ウェポンとライフ。ハイブリッドなサプライを、あなたならどんな配分で割り振るのか。
文字通り魂を削り戦う、本格派ダークファンタジー。
是非ともこの世界を皆様に堪能していただきたい……!