球は転がる! 話も転がる! 先の読めない面白さ!

 もし、自分の身の回りで不思議な出来事が起こったとしたら、恐いって悲鳴を上げて逃げ回るだけでは終わらないと思うのです。だって毎日は否が応にも続いていくわけだから、その出来事に影響を受け、邪魔されつつも、どうにか折り合いをつけよう、何とかやり過ごそう、嫌だけど解決しようと頑張るんじゃないのかなあ。
 ──実は私、カクヨムではそんな人たちのお話を書きたいと思っていたのですが、高羽さんがお手本みたいな作品を読ませてくださいました。それがまさにこれ!『あな球♡』です(タイトル、勝手に縮めてすみません。でも、私のなかでは愛を込めて呼んでいます)。
 穏やかに暮らしたい主人公、桐治さんの気持ちなどまるで無視で、次々と現れる&持ち込まれる球に次ぐ玉、そして珠。彼が二人の美人助手に追い立てられるようにそれら不可思議な存在にどう対処していくのかが、読みどころのひとつ。
 もうひとつ、それぞれの球に係わった人々のドラマにも注目してほしいです。球によって救われたり、本性が垣間見えたり、邪な気持ちに罰を受けたり……。
 もし、この物語を球にたとえるとしたら、七色球でしょうか。ジャンルは現代ファンタジーになっていますが、私的には『ファンタジーの器にホラーの土を入れ、コメディとミステリーの花を咲かせた』欲張りなストーリーです。
 今、物語は、球がどこから? どうしてやってきたのか? を追っていよいよ佳境に突入。 
 とにかく! 予定調和な世界でないところが、この作品の一番の魅力なのです!
 
 

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