底辺YouTuberが見た光と絶望

YouTuber。誰でも気軽に動画を撮影できる現在においては、それは最も身近で最も華やかな職業といえる。
しかし光あれば闇あり。人気YouTuberの陰には、ろくに誰にも見られることのない動画が無数にアップロードされ続けるのだ。それでも彼らは少しでも人の目を引くためにあらゆる手段で視聴者を呼び込もうとする。

その極地と言えるのが事故物件――過去に人が殺された部屋――で自分が暮らす様子を配信しようとする本作の主人公だ。
恐ろしいことにこの男が配信する動画が…………本当につまらなさそうなのである。
「小説なのにつまらなかったらダメじゃん」と思われるかもしれないが、ただのつまらなさではない。大した話術があるわけでもなく自身の状況を淡々としゃべるその様子は「あっ、こういう動画見たことある」とつい思ってしまうリアリティのあるつまらなさなのだ。
リアリティといえば、売れないバンドマンとしての来歴や、動画についたコメントで一喜一憂する様子など、一見物語に関係しないような主人公の過去や言動の一つ一つが生々しい。

おかげで主人公の冴えないYouTuberっぷりに拍車がかかり、最初は彼の日常に対して哀れさすら感じてしまう。
だが、物語後半で動画に幽霊らしきものが映り込んでくると、話は大きく変わる。これまで底辺YouTuberの悲惨さを強調する役割だった生々しさが、主人公を襲う怪奇現象に臨場感をもたらす極上のスパイスとなるのだ。

どうすれば人を怖がらせられるのか、という問いに対する一つの答えのような作品だ。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

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