魑魅魍魎の後宮を舞台に、突撃天然娘(美少女!)が旋風を巻き起こします。

 病気の母を医者に診せることもできず失い、頼みの父も諦めムード。
 そんな名前だけ貴族の貧乏な家柄に生まれ育った美少女、鈴玉は、お家再興のため後宮を目指します。

 ところが天然過ぎる性格が後宮に合うはずもなく、たちまち悪評ばかりの怠業女官になって、やる気がだだ下がり。
 お仕事を怠けて池の鯉相手に遊んでいるシーンから物語は始まります。

 初めて読まれた方は、きっと、「このやる気ゼロのヒロイン、なんじゃこれ」と呆れるでしょう。


 でも、待ってくださいね。
 この物語、確かな中国史関係の知識のうえに、計算され尽くされ、伏線をきっちり織り込んだ精巧な絹織物のような構造になっています。美しく流麗な文章の真ん中に、場違いなほどに天然な鈴玉がいるのです。そこがポイントです。


 このゼロどころか、マイナススタートの第1話は、このあと、鈴玉が巻き起こす快進撃の予兆にすぎません。
 
 そんな鈴玉、どういう訳か王妃さまに抜擢され、その御殿、鴛鴦殿に配属されます。とうぜん失敗ばかり、お皿割りまくり……

 それが、持ち前の好奇心や行動力で他の女官や宦官たちと関わるうちに…… 

 鈴玉の態度が悪いのは実家がウルトラ貧乏だったせいなのです。本当は鈴玉は容姿だけでなく心も綺麗で素直過ぎる美少女でした。
 突っ込みは厳しいけど、意外と優しい鴛鴦殿の人々に囲まれているうちに、強気を装った意地っ張りな態度が消えていきます。

 それに、鈴玉には後宮を震撼させるほどの才能が眠っていたのでした。
 鈴玉が発揮した才能が、後宮の妃たちの危うい力関係の天秤を揺さぶることになります。気づけば鈴玉は、政争渦巻く後宮で台風の目になっているのでした。
 
 ここから先は、ぜひ、読んで確かめることをお勧めします。


 敬愛する王妃さまのため、仲間を守るため、あるいは友達のため、鈴玉は自身が傷つくとこもいとわず走ります。
 保身であったり、嫉妬だったり、謀略だったりと魑魅魍魎の巣窟と化した後宮ですが、鈴玉の熱い想いが人を動かし、何かを変えてゆきます。
 
 突撃天然娘、鈴玉――物語を読み進めるたびに、きっと、一生懸命なこの美少女を応援したくなるでしょう。読んでくださいね。お薦めです。

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