A Days in the ease life

第1話 Re Start

「メアさんおはようございます。」

「くかー。」

「メアさんってば。起きてください。」

「うーん。もうちょっと食べてからー。」

「何をですか?! 7時に起きるって言ってたでしょう?」

「……んが? もう7時? ……あら、目の前に美味しそうなスウィーティが居ます。ちぅぅぅう。」

「……んん…………………ぷはっ!いきなり何すんですかメアさん?!」

「ちぇー。ベロ入れれなかったー。」

「もぉぉ。早く起きてくださいな!」


easeに来て5日目。

昨日もこんな感じだった。

朝は弱めなメアさんは、毎日7時に起きて朝食の準備をしてたらしい。

だから起こしに来たんだけど、見ての通りこんな調子。ほんとに弱い。

こんな感じでよく今までやってこれたもんだわ。

だって開店9時なんでしょ? お店の準備抜きにしても、ぎりっぎりじゃない?

私、いろんな職種を転々としてきたから分かるけど、こんなゆるーいお店初めて見た。

それに……メアさん、ホテルから帰ってからは、何だかんだと私に過剰なスキンシップが止まらない。昨日なんて朝からものすっごいキスされたからね? 思わず腰が浮いたもん。 蕩けちゃうかと思った。 メアさんキス、すっごい巧いの。

いえいえ。とにかく、


早く起きてもらわないと、私もいろいろと間に合わないし、このあともっと大変な事が待っているんだもの。


そう。マスター。

酷いの。寝坊が。

あんなひと見たことない。メアさんの比じゃないの。

たぶん、もう一度阪神淡路大震災が起こっても、起きないんじゃないかな?そのまま召されそう。


よしんば起きたとしても、動き出すまでにものすっごい時間がかかる。

これから毎朝どうしようかと、憂鬱になるほど。


っていうか………………


「…………何、やってんですかメアさん…?」

「えっ? 見ての通りですよ? 雫ちゃんにひざまくらされてるんです。ごろごろ。やーん。癒されるって、このことだわー。」

「………どさくさに紛れておしり撫でないで貰えますか?」

「やだ。雫ちゃんのおしりは私のもの。」

「………あとでいくらでも触って貰っていいですから、とにかく今はほんと起きてください。」

「ほんとですか?! 言質げんちとりましたよ? じゃぁ休憩時間にね? はい指切ったー!」


このひとほんとに大聖霊??

中身インキュバスと変わらないじゃないの。


「じゃぁ、着替えてダイニングに降りてきてくださいね? 私はマスターを起こさなきゃ。」

「はーい。」


ふぅ。

がんばれ。私。



***



「マスター?」


一応、ノックしてみる。

けど返事なし。まぁ当然だろうな。


「入ります。」


マスターの部屋は本の山。

いや、本の谷あいにある、わずかな居住空間に辛うじて寝ているといったほうが想像に易いだろう。

本崩なだれを起こさずにベッドに近づくには、かなりの熟練を要する。


「きゃ?! ─────!!」


とまぁ、十中八九崩れる。

でも、起きない。


美男子なんだけどなぁ……もったいない…。


メアさん曰く

「そこがまた魅力なんですー♪」

だそうな。


私は、ひとに対して恋愛感情を持ったことがないので、メアさんの盲目さは分からないけど、せめて、分類くらいはしようよって思う。


「…マスター?朝ですよ。」


ベッドサイドから布団の塊を揺すってみる。起きない。


「マスター? そろそろ起きてください。」


布団をめくってみた。起きない。

パジャマなんて着てんだよな。かわいい。

でも、これくらいで起きるんなら苦労はない、か。


「…マスター? お客さんですよ? ───きゃ!」


カーテン開けてみた。ら、窓際の本が本崩なだれた。

どんなとこまで本を積んでるの?!

が、起きない。


寝顔も、かわいいんだけどなぁ。

さすがにだんだんムカついて来た。

よし。


「起・き・て・く・だ・さ・い!!」


脇をくすぐってやる!

さすがにこれは起きるでしょ?!


「こちょこちょこちょこちょこちょこちょ……こ…ちょ………」


…… 死んでるんじゃないの?!

微動だにしない。嘘でしょ?

一応、息してるかどうか確認を……


「───きゃ!!」


えっ?! 何?

いきなり首に抱きつかれた。


「ちょ ちょっと?! マスター? マスターってば?!」


ものすごい力で逃げられない。

ちょっと?! 首筋にキス?えっ?!


「……は…ん…。 ま マスター?」


すごい力。

片手がワンピの裾から入ってきて……おしりを?

ちょっと?! ヤバいんじゃないの?


「ちょっと? ……あん…マスター?!」


なおも私の身体を蹂躙する手。

これ以上されたら、さすがに私もキツい。

したいなら、言ってくれればいい。

私の身体で良いなら、いくらでも。

それだけの恩義は受けていると思うから。

だけど……メアさんが、哀しむのは嫌だ。

同じ屋根の下で暮らしてるんだから、顔も合わさなくちゃいけない。私は、メアさんに黙ってるなんて無理だ。大好きだから。

メアさんが大好きだから。


「……ふ……ぁ…ん……マスター…? やめて……お願い…です……ん…ぁ……」


いよいよワンピがたくしあげられて、ブラが外され、ショーツの中に手が入って、覚悟を決めた時。


「雫ちゃーん起きましたー?」


階下から声が近づいてくる。

まずい! この状況はさすがに言い逃れも出来ない。どうしよう…?


「雫ちゃ……ん…?」


入って来ちゃった!!

メアさん!!


……少しの沈黙……………からの


「あぁぁぁぁぁぁマスタぁあ?! それっ 雫ちゃん! 私じゃないですっ! もぉぉ 完っ全に寝ぼけてますねー? それ 私のごほうびっ! そして雫ちゃんは、私のものー!!離してくださーい! よいしょっ よいしょっ!離せー!!」

「…………騒がしいですね…メア……ん?……雫じゃないですか。 今朝は雫が起こしに来てくれてたんですね?おはようございます。 てっきりメアかと思っちゃいました。メアはいつもこうすると喜ぶので。すみませんね。さぁ服を着て。メア?おいで。」

「えーん。マスター!」



……えぇぇぇぇ。

…出て…行ってもいいかなぁ?




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洗髪処easeの施術カルテ。 finfen @finfen

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