現実を描いているようで、どこか非日常的な、異界のベールをかけたような

 不思議な雰囲気のする作品です。全体的に幽かな静謐をはらんでいました。
 終盤のドラマチックな情景が印象に残っています。作品から真夏のような熱量を感じ、本人にしか書けないだろうなという力もあり、なんだかすごく羨ましくなりました。
 文章がうまいですね。明瞭で鮮やかな描写の数々。扱う熟語に語彙力の高さが伺えます。文学作品として売っていそうです。主人公の才能にも説得力がありました。
 それにしてもモテる男だ。だけど思いはただの恋のようにストレートではない、複雑な関係性ですね。
 小物類をうまい具合に使っていて、生々しかったです。
 関係性だとか描写だとか大人っぽいように見えて、そういうところをが若さや青さを際立たせていると感じました。心情描写も一役買っているのではないかと。
 中盤あたりからギアが切り替わって物語が加速し、面白くなっていく印象を受けました。

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