彼が人魚を殺す時

『その国の王族は、人魚を呼び出すことで王位継承候補となる』

作品概要の最初に書かれている文である。
人魚、と聞くとまず私の中に浮かんだのはアンデルセン童話の『人魚姫』、あるいは『赤い蝋燭と人魚』などだろうか。
いずれも人に憧れた、どこか儚く、切ない物語の主人公である。
だが、この作品に出てくる人魚は断じて違う。
そもそも主人公が召喚してしまったのは、人魚ではなく悪魔である。
とびきり可愛く、我儘で、そして強かで容赦が無い。その可憐さと巧緻さは、まさに『悪魔』と称するに相応しい存在であると言えよう。
主人公であるローテム第四王子と王位をかけて競う、他の王子や姫が持つ人魚達も、彼女に負けず劣らず個性的である。
だが、我々が「人魚」に持つイメージとはどこか異なる。

人間と人魚、そして悪魔。
それぞれの思惑が絡み合い、一気に解けていくタイトル回収の瞬間は、秀逸の一言に尽きる。

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