世界の旅人

優秀な兄・冰絽斗（ひろと）の影に埋もれ、波風立てずに生きてきた少女・池咲枝（いけさくよ）。
18になり、無難に付属大学への内部進学を選んだ彼女。
しかし本当に学びたい声楽科は、その大学には無かった。
優しかった兄は昨年事故死。
漸く咲枝の存在に気付いたかのような親の態度は、
まるで腫れ物に触る如きものだった。
元々厭世的で友人は少なく、
唯一の拠所をなくした咲枝は呆然と降りていた階段から落ち、
車が横切ろうとする道路に飛び出してしまう。
（これで……兄貴のトコロに行けるのかな……）

しかし、落ちた先は死後の世界などでなく、
空飛ぶ都市の存在する、見たことも無い別世界。
旅の先に待つものは、彼女にとって希望となるか、絶望となるか。
異界へ落ちた少女と、そこで出会った少年が紡ぐ、異世界召喚ファンタジー、始動。