カクヨムで年末年始にWeb小説コンテストが開催される都度、主にミステリジャンルで銀鏡怜尚氏が参加し、過去三度新作長編を発表なさっています(※第三回のみ既存作にて参加なさっていた模様です)。
今年も恒例の時期になり、同氏の長編ミステリが読めることを大変嬉しく思います。
さて、銀鏡氏の作品は、しばしば医療系の要素を盛り込み、社会問題に深く切り込んだ内容なのですが、この最新作も例に漏れません。さらに今作では、刑務所という特殊な舞台設定を用い、取り分け終盤に緊迫感溢れるドラマが待ち受けています。
硬質な筆致と伏線回収の巧みさは、重厚な物語を力強く支え、読み手の期待を決して裏切らないでしょう。
歯応えのある社会派ミステリがお好きな方は是非!
32話まで拝読させて頂いてのレビューです。
「ルウェーーーベルが違うんだよっ!!」
セルリアンブルーのマット上で、そう巻き舌で吠えていたのは某人気プロレスラーの悪徳マネージャーだったでしょうか。レベル? それともレーベル? いきなり意味不明な書き出しで申し訳ございません(汗)ですが、この作品の魅力並びに作者様の筆力を端的に言い表すと、正にこのひと言に尽きます。
舞台は刑務所。謎めいた猟奇的殺人事件。犯人に似つかわしくない優男の容疑者。その妻であるミステリアスな麗しき女性。男の好奇心をくすぐる展開。複雑に絡み合う人間模様。二転三転するどんでん返し。からの驚愕の真相などなど。それらが硬質でありながら理解しやすい文体で綴られています。
事件の謎を追うのは生真面目でウブな刑務官・鮎京と、一見チャラいが切れ者の常勤医・城野。登場人物も魅力的で、ホームズ・ワトソンスタイルのバディものとしても堪能できます。容疑者である「青山」をはじめ、各々の名前に込められた意味も見逃せないところです。
まさに王道の社会派推理。確かな医療知識と知性と筆致と、そして綿密なプロットによって綴られる魅惑の銀鏡ワールド。ラノベで異世界なネット小説という大海原のリングの上で、そのレベルを圧倒的に凌駕した至極の本格推理小説をとくとご覧あれ。
今回も見事だ。もはやラノベの域を超え、大衆小説と言えるだろう。長編なのに、ストレスなしに読み進められる、ハイクオリティ・本格医療ミステリーだ。
今回の舞台は刑務所。そこで服役している青山という男と、主人公が出会うところから物語は動き始める。青山には他の服役囚とは違った様子が見受けられた。いかにも、囚人らしくないのである。このことが気になった主人公は、青山の犯した罪を調べ始める。そこに登場し、協力してくるのが、個性豊かな面々だ。警察や同じ刑務所の医師たち、そしてこの作者様の読者ならきっと驚くアイツまで……。
青山が犯したとされるのは、ただの殺人ではなく、死体から臓器を取り出すという猟奇殺人だった。そして何の符号か、青山自身も臓器移植の手術痕があった。
そして、次の殺人事件が起こる!
青山の妻とその子供。警察。刑務所。そして病院。人間関係は複雑に絡まり合い、接触回数でその濃度は濃くなっていく。綿密な計画によって隠された本当の犯人とは? 今回は医療知識だけでなく、刑務所の知識、警察の知識まで網羅された作品となっており、読者を引き付けてやまない作品だと言える。
そしてこの作品をより楽しむために、この作者様の別の作品も是非、ご覧いただきたい。そうすれば、あの作品のあの彼の後日談としても読むことができるからだ。いつでも本格医療ミステリーなのだが、今回はさらに磨きがかかっている。
これを読まずに、今回のコンテストを終えるのはもったいない。
是非、ご一読ください。
カクヨムコンの初期から、数々の高評価を受けていらっしゃる作者様の最新作です。
そんな前評判もあり、この方の作品はいつか絶対に読もうと決めていました。
運よく、その機会を設けることができ、さあ読むぞと最初のページをめくったら――
ただただ圧倒されました。
まずは情報量。
入念に下調べされた刑務所の知識、そして作者様の持ち味である医療の知識。
これらが余すところなく配置され、作品全体のリアリティをとてつもなく底上げしてくれます。
これほど細部にこだわった作品ですから、おのずと重厚感が生まれ、大変読みごたえのあるものに仕上がっていました。
次に表現力。
豊富な語彙により綴られた文章は、硬質でありながら読みやすく、グイグイと作品の世界へと引き込んでくれます。
すべて読み終えてから文字数を確認して、20万文字を超えていたことに驚愕。
長さをまったく感じさせないほど、卓越した表現力でした。
そして濃密な心理描写。
登場人物の考え、迷い、怒り、嘆き、狂気……いずれもがダイレクトに伝わってきました。
この他、先を読ませない構成や複雑に入り組んだ人間関係、伏線などなど、挙げればキリがありません。
読みながら何度「凄い……」と呟いたことか。
内容は他の方が触れていらっしゃるので、私から敢えて語ることはしませんが、「とにかく読んで下さい、凄いから!」の一言に尽きます。
個人的には、本作がホラー・ミステリー部門の大賞候補。
願わくばライトノベルのレーベルではなく、一般文芸のハードカバーとして発刊して欲しい。
そう願わずにはいられない、珠玉の作品です。