この阿鼻叫喚の異世界を覗く勇気のある者は真の勇者、……かもしれない

 作中で描かれる「異世界」の何がどう阿鼻叫喚モノなのかは、タイトルを見れば一目瞭然でしょう。国家の存亡をかけて戦うストイックな軍人アルベルティーニ氏は、なんとゴキ。彼が忠誠を誓う国王様もゴキ。彼と一緒に戦う軍人たちもみんなゴキ。その軍には「航空部隊」もあるというのですから、想像しただけで恐ろしや……。
 そのアルベルティーニ氏がひょんなことから転移した先は、現代に生きるとある会社員の家。しかし、その会社員、秋山宗次郎氏はただの会社員ではない。なんと、製薬会社でゴキ駆除剤の開発を担う研究員だったのだ! これこそ、まさに運命的な邂逅!

 知的ゴキであるアルベルティーニ氏は言葉を話し、宗次郎氏や彼の同僚二人(共にゴキ駆除剤の研究員)と交流しつつ、やがて皆揃ってゴキ異世界へ……。
 襲い来る敵ゴキに対し、宗次郎たち人間チームは威力絶大な武器で応戦するのですが、彼らがどんな武器を使うのか、……まあ、その、期待通りのカッコイイ展開です。あっ、ここまで語るのに、すでに「ゴキ」という言葉を九回も使ってしまいました。

 タイトルに恐れおののく方も少なくないかと思われますが、ビジュアルな想像をしなければ、たぶん大丈夫です。怖すぎると震えつつも読み進まずにはいられない、まさに何とかホイホイにかかるテカる虫のような心境で、ぐいぐい惹かれてしまいます(第9話まで読了時点での感想です)。