テケテケさんと機械の両足
トカゲ
テケテケさんと機械の足
テケテケ
冬の北海道室蘭の踏み切りで、女子高生が列車に撥ねられて上半身と下半身とに切断されたが、あまりの寒さに切断部分が凍結してしばらく生きていたという。
この話を聞いた人の所には3日以内に下半身の無い女性の霊が現れる。
逃げても時速100~150キロの高速で追いかけてくるので追い払う呪文を言えないと恐ろしい目にあうという。
またその異様なスピードと動きとは裏腹に、顔は童顔でかわいらしい笑顔を浮かべながら追いかけてくるためその恐ろしさをさらに助長するらしい。
・・・
みんなはテケテケさんという都市伝説を知っているだろうか?
上半身だけで高速移動しながら暴れまわる都市伝説の事だ。
私はそんなテケテケさんが可哀そうで仕方がなかった。
テケテケさんはずっと下半身を探しているらしいけど、見つけたら治ると思っているのだろうか? まぁ、探しているんだしそう思っているんだろう。
私はそんなテケテケさんのために下半身を用意した。これは単三電池8本を使用する事で自由に動かすことが出来る最高傑作の両足だ。
貴重な中学2年生の夏休みを使って作った私の力作を、お年玉貯金7万8千円を使用したこの両足を、果たしてテケテケさんは喜んでくれるだろうか?
不安だけど、これだけ頑張ったんだからきっと喜んでくれるはずだ。
私はそう考えて近所の踏切に急いだ。
テケテケさんの為に造った両足が重くて地味にむかつく。何でこんなの作ったか分からなくなってくる。
テケテケさんは私の予想通り踏切で這いまわっていた。
その姿はまるでペルソナ3のシャドウのようだ。まじ気持ち悪い。生理的に無理。
「テケテケさん、あなたに両足を作ってきたの。受け取ってもらえるかな?」
だけど私は嫌悪感を抑えてテケテケさんの近くに作った両足を置いた。
テケテケさんはそれを不思議そうに見て、鼻で笑う。
そして私の作った両足を持ち上げると思いっきり持ち上げて地面に叩き付けた。
「あ、あぁーー!」
思わず私は声を上げる。
あれを作るために私は7万8千円も使ったのに! 夏休みも全部使ったのに!
途中から後悔してたけど最後まで自分だけで作ったのに!
あぁもう! 最初に部品全部買うんじゃなかった! あれが間違いだった!
返せ! 私のお金と時間を返せ! 返せよぉ!
「な、な、なにしてんのよぉ! アンタこれ、幾ら掛かったと思ってんの!?」
私の悲鳴を無視してテケテケさんが襲い掛かって来きた。
テケテケさんの右手が迫る。しかしその動きは遅い。
「舐めんじゃないわよ!」
私は向かってきた右腕を掴んで腕ひしぎ十字固めの体制に入った。
完全に決まった! テケテケさんが必死にタップをするが私は力を緩める事はしない。
「このまま、折る!」
ボキリ、と鈍い音が深夜の住宅街で響いた。
ざまぁ見やがれ! 私の好意を無下にするからだ。
「がやぁあ!」
「ざまぁあ! ちょっと受けるんですけど!」
私は立ち上がりテケテケさんの頭をシュートする。
私の7万8千円を返せ! 夏休みを返せ!
私はこの日、久々に全力で泣いた。
動かなくなったテケテケさんに私は作った両足を無理やり装着させる。
そして左手に動かすための足を動かすためのリモコンを持たせて私は家に帰っていった。
ちくしょう。私の7万8千円………
テケテケさんと機械の両足 トカゲ @iguana
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