『何故かの』大学生編「昼休み」
「安藤くん、ここいいかしら?」
「委員長か……別に食堂の席くらい好きに座ればいいだろ? それとも、大学でも『ぼっち』な俺が一緒に昼飯を食べる友達がいるとでも思うか?」
「でも、安藤くんには朝倉さんがいるじゃない?」
「朝倉さんとは学部が違うけどな……」
(俺の学力が足りなかった所為で朝倉さんと同じ学部に入れなかったのは委員長でも知っている事実だよね?
まったく、何で同じ大学なのに学部が違うだけで通うキャンパスが違うんだよ!
しかも、同じ学部の知り合いは委員長くらいしかいないし……あ、一応もう一人いるけどアイツはどうでもいいか……)
「それでも、わたしは朝倉さんが後からこの席に座る可能性も考えて確認をしたのよ。それに、安藤くんが大学でも『ぼっち』なのは今更確認することでもないでしょう?」
「朝倉さんなら、今日は授業が無いから休みだよ」
(相変わらず、委員長は一言余計なんだよなぁ……)
「因みに、委員長の昼飯はローストビーフ定食か……」
(この学食の日替わり隠しメニューを頼むとは流石は委員長……お目が高いな)
「あら、そういう安藤くんも同じメニューを頼んだのね……。ちょっと、わたしの真似をしないでくれるかしら?」
「タイミング的には俺の方が頼んだの先なのに、その言いがかりは酷すぎないか!?」
(普通、こういうのって後から注文した方が真似したって言われるよね!?)
「あら、ごめんなさい? 安藤くんのことだから、わたしを口説くつもりで真似したのかと思ってしまったわ。クフフ♪」
「俺がいつ委員長を口説こうとしたんだよ……」
(そう言うあらぬ噂を立てるのは止めてもらえますかね? ただでさえ。こっちは
「あら? だけど、大学でも安藤くんは新しい女の子を見つけては、ちょっかいをかけていると有名なのだけど……?」
「誰だそんな噂を流したのは!?」
(そんなの事実無根にもほどがあるだろ! こっちはただ変な事件に毎度巻き込まれているだけで――)
「誰も何もわたしは貴方の彼女である朝倉さんご本人からその噂を聞かされているのだけど?」
「……は?」
(……パードゥン?)
「安藤くんってば、知らないの? 一応、わたしは学部が違う朝倉さんのために、安藤くんの行動を毎日報告してあげているのよ。だから、朝倉さんから安藤くんが毎度引き起こす女性絡みの問題についての愚痴とかも良く聞いてあげているのよ」
「いや、そんなの初耳なんだが……」
(てか、朝倉さんに毎度俺の行動がバレバレだなと思ったら、委員長! お前が犯人だったのか!?)
「だとしても、新しい女の子うんぬんに関してはでたらめにもほどがあるだろう? いつ俺がそんなこと――」
「三日前、線路に飛び込みそうになった女子高生を彼女に黙って一人暮らしの男子大学生の部屋に泊めたエセぼっち大学生は誰だったかしらね……?」
「い、委員長! なんでそれを……」
(いや、あれは違うんだ! あの子が風呂を借りるまでは、男の子だと思ってて――)
「あと、一ヵ月前は双子の女子中学生から『パパ~♪』なんて呼ばれながら渋谷の街を歩いていた変態さんがいたとか……?」
「うぐぐ……っ!」
(あ、あれも……脅されて仕方なく……)
「さらに、その前はアパートの大家さんに一週間泊まり込みで執事をしていたとか?」
「ぐふぅ!」
(あれもなんやかんやでアパートの家賃が払えなくて代わりに『体(健全)』で支払うために仕方なくて……)
「なぁ、委員長。この話はこれで止めにしないか? これ以上、続けても誰も幸せにならないと思うんだ?」
「ねぇ、安藤くん。このキャンパスの近くにそこそこお高いハンバーガー屋さんがオーブンしたのは知っているかしら?」
「……何個だ?」
「『個』では無いわ……何『回』よ」
「……二回分でどうだ?」
「少ないわね。少なくとも、周五では行きたいわね」
「なっ……」
(そこそこお高いハンバーガー屋さんを五回分も奢れだと!? そこそこお高いってことはセットが800円はするとして周五で4000円……!?)
「ダメだ……さ、三回でどうだ?」
「五回よ」
「そこを何とか……三回で!」
「ダメね。五回よ」
「三回!」
「五回よ」
「お願いします! 三回!」
「七回よ」
「いや、お前が増やすなよ!?」
「はぁ、仕方ないわね……。じゃあ、五回で勘弁してあげるわ」
「ほ、本当か……? 流石は委員長、分かって――って、いや! 全然妥協してねぇじゃん!?
(お前、何『妥協してあげるわよ……』みたいな空気出してんの!?)
「分かったわよ。なら、四回でどうかしら? 因みに、これ以上は妥協しないわよ」
「ぐぬぬぅ……」
(だけど、今週はCA文庫の新刊が……)
「その代わり、行くのは週一……つまり、週に一回で合計四回分奢ってくれればいいわ」
「わ、わかった……」
(うん、それなら来週は塾のバイトの給料日だから、なんとかなるな……。まぁ、所詮ハンバーガー屋なんてセットが800円くらいだから、新しいラノベを一シリーズ買うのと変わらないか……)
(クフフ♪ 安藤くんってば、引っかかったわね? 貴方と同じ塾でバイトしているのだからお給料日は把握済よ……。因みに、少しお高いハンバーガー屋さんはセットが安くても1500円はするわ)
「あ……」
「ん? 委員長、どうしたんだ?」
「わたしとしたことがせっかくのローストビーフ定食なのにトッピングのわさびとお醬油を取って来るのを忘れちゃったわ」
(これって隠しメニューだからトッピングの類は注文時に言わないと出してくれないのよね……。もう、ローストビーフって言ったら、わさび醤油が一番合うのに……)
「それなら、俺のトッピングのわさびと醬油が余っているから使えば? どうせ、わさび醬油でも作りたかったんだろ?」
「あら、いいの? だけど、奢りの回数は減らさないわよ?」
「別に、余ってたからな……。てか、こんなのでそんなケチなこと言わねぇから……」
(まったく……コイツは素直に『ありがとう』も言えないのかね?)
「というか、安藤くん。さっきから気になって言ったのだけど……その『委員長』って呼び方おかしくないかしら? わたしはもう『委員長』では無いわよ?」
「でも、大学の皆は『委員長』って言ってるよな……?」
「それは、安藤くんが入学当初にバカでかい声で『あ! 委員長だぁあああああ!』って、叫んだからでしょう!」
(あの事件の所為でわたしの大学生生活の一歩が『委員長』で過ごすことが決まったんだからね!? 責任取りなさいよ!)
「仕方ねぇだろ! あの時は朝倉さんが違うキャンパスだって知って一人で絶望してたから知っている顔に会えて嬉しかったんだよ!」
「そ、そう……わたしに会えて嬉しかったのね……」
(なら、仕方ないわね……)
「……?」
(あれ? 何で委員長の奴、顏が赤いんだ?)
「安藤くん……貴方、本当にそういうところよ」
「いや、どういうところだよ……」
(そう言われても、別に心当たりが無いんだが?)
「なんか心当たりが無さそうな顔をしているけど……最近、安藤くんが桃井さんとちょくちょく会っている話も朝倉さんから聞いているんだからね?」
「いや、あれはバイクの教習所で偶然再会しただけだから!」
(そんな浮気の証拠を突きつけたみたいに言うの止めてくれない!? 俺だって違う大学に進学したはずの桃井さんが同じ教習所に通っててビックリしたんだからな?)
「でも、安藤くんが桃井さんとデートしていたとかいう噂もあるのよね~?」
「……それも、朝倉さんから聞いたのか?」
(いや……でも、あの時のことは朝倉さんにはバレていないはず……)
「安藤くんのご想像にお任せするわ……クフフ♪」
(本当は桃井さん本人から聞いたのだけど、これは黙っていた方が面白そうね?)
「いや、委員長……これは違うんだ!」
「一体、何がどう違うのかしら?」
「あれは、とある事情で桃井さんに借りができて仕方なく……」
(そう、仕方なく『じゃあ、この借りは安藤くんの体(デート)で返してもらうかなー?』――って、言う流れで……)
(まぁ、桃井さんのことだから大方の事情は予想がつくのだけどね? 多分、教習所の筆記試験の対策を教えてもらう代わりに、休みの日を桃井さんの買い物に付き合ったとかいうオチでしょう)
「はぁ……安藤くんもあまり朝倉さんに心配かけない方がいいわよ? 一緒に住んでいるだから、あまり隠し事はできないと思うわよ」
「いやいや、朝倉さんとはアパートの部屋が隣なだけで一緒には住んでないから……」
「でも、ほぼ同棲状態なんでしょう? 妹ちゃんが『お兄ちゃんってば、サクラお義姉ちゃんにご飯まで作ってもらっているんですよ~』って、言ってたわよ?」
「あ、あれは朝倉さんが二人分作った方が節約になるって言うから……」
(てか、俺の個人情報漏れすぎじゃない? その個人情報の水漏れはどこの業者に連絡したら直してくれるんですかねぇ……)
「だけど、寝る時はちゃんとお互いの部屋に帰っているし風呂とトイレだって別々だぞ」
「それって、それ以外の時間は一緒の部屋で過ごしているってことにならないかしら?」
「確かに……」
(……あれ? じゃあ、俺と朝倉さんって同棲しているのと同じなのか?)
「とにかく、わたしが朝倉さんから相談されるような事件はあまり起こさないでくれるかしら?」
「はーい、肝に銘じておきまーす……」
「はぁ、本当に分かっているのかしら……」
(他にも、姉ヶ崎先輩の事を姉ヶ崎先輩の妹さんに相談されたり、その妹さんのことを安藤くんの妹ちゃんから相談されたりと色々わたしも大変なんだからね?
まったく……皆、わたしをカウンセラーか何かと勘違いしているんじゃないかしら?)
「「ご馳走でした……」」 ← 同時に食べ終わる安藤くんと委員長
「委員長、この後は?」
「わたしは群馬文化事情の授業があるわ。確か安藤くんも同じ授業を取っていたわよね?」
「じゃあ、一緒に行くか。あ、そう言えばアイツも同じ授業を取っていたよな……」
「……安藤くん、思い出さないようにしていたんだから言わないでくれるかしら?」
「いや、そうは言ってもどうせ向うからやって来るだろ? アイツはそういう奴だ」
(ほら、そういっている間にやって来たぞ? アイツが……)
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおい! 皆ぁああああああああああああああああああ! 待たせたな! そう、俺が来たぞ! 俺だ俺だ俺だ俺だ俺だ俺だ俺だ俺だ俺だ俺だ俺だぁあああああああああ! そう、この山田様だぁあああああああああああああああああああああああああ!」
「なぁ、委員長……。山田って、何でこの大学に入れたの?」
「そんなのわたしが聞きたいわよ……」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お久しぶりです、出井愛です。
カクヨム版『何故かの』久しぶりの番外編いかがだったでしょうか?
少しでも楽しんでいただけたのなら幸いです。
何故かのに関しては現状まだお伝えできる情報はありません。
ですが、どのような形であれ続きの物語は出すつもりです。
お待たせするとは思いますが、どうか信じて待っていただけると嬉しいです。
また、カクヨムで新作【俺の青春に友達はいらない。】の連載を始めました。
https://kakuyomu.jp/works/1177354055222062788/episodes/1177354055222865446
こちらの作品は私のYouTubeチャンネルで執筆の様子を生放送で配信しますので、良ければ見てくれると嬉しいです。
【出井愛のYouTube】
https://www.youtube.com/channel/UCME73O6H4acsES5BssGL82g?view_as=subscriber
さらに、Twitterや私のYouTubeチャンネルで発表させていただきましたが、新作ラノベの企画が進行中です。
こちらはまだ作品名やレーベル名は言えませんが、情報が解禁され次第Twitterや出井愛のYouTubeチャンネルで発表させていただきますので宜しくお願い致します。
言いたいことが言えなかったり、知りたいことが教えてもらえなかったり、某コロ〇の影響で色々な予定が消えたり進まなかったりで、発信できる情報は少ないですが、それでもTwitterやYouTube、カクヨムでできるかぎり活動を再開していきますので応援していただけると嬉しいです。
どうか、これからも応援宜しくお願い致します。
出井愛
何故か学校一の美少女が休み時間の度に、ぼっちの俺に話しかけてくるんだが? 出井 愛 @dexi-ai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。何故か学校一の美少女が休み時間の度に、ぼっちの俺に話しかけてくるんだが?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます