砂漠にマットレス
hyu
そういうことに
「あ、流れ星!」
「おーすげー」
「今ので何個目?」
「いやもう、わからんくなった」
「せやなぁ。つか、流れ星というより彗星やんな、今のは」
「一瞬明るくなった気ぃしたよな」
「それにしても、すごい星空……」
「ホンマに。天の川がミルキーウェイっての、ちょっと納得できるよな」
「? ミルキーウェイ?」
「あー……いや、まぁ、わからんねやったら、ええわ」
「……今のちょっとバカにした?」
「別にしてへんけど。ほら、来てよかったなぁ、て」
「……」
「いやなんでそこで黙るん」
「や、だってさ、シャワーないし」
「あー」
「トイレ、アレやし」
「まぁ、なぁ、砂漠やからなぁ」
「しかも、まさかの砂漠に直マットレスで寝ることになるとは思わんかった」
「いや、テントあるで」
「それはそやけど、現状よ」
「あっ」
「あ、また流れた」
「……」
「……」
「……こやってテントの外でってのも、この時期限定らしいやん。せっかくなんやし」
「まぁ、それはな、そうやけど。日本人に人気のツアーって言ったら、フツーさ」
「うん」
「シャワーとトイレくらいはあると思うやん」
「うーん」
「テレビとかでも、そゆとこ泊まってるし」
「あれは、それなりに出すもん出してるからやろ。この現地ツアー、めちゃ安かったやん」
「……確かに、安かったな」
「申し込みのスタッフ、英語しか通じんくて焦ったけど」
「フランス語とアラビア語の国で英語通じただけヨシとしようや」
「うーん……」
「あの値段で全食事付きやで。どれもケッコーイケたし」
「確かに、夕飯のタジン美味かったな」
「ミントティーもな。そんで砂漠にラクダでこの、星空やで。それこそ砂漠にマットレスて経験、貴重やん」
「積極的に経験したいとは思わんかったけどやな」
「シャワーないし、トイレアレやし、誰が使ったか分からんマットレスやし?」
「そう」
「絶対無理とか言うてたよなぁ。今寝てるけど」
「絶対、とは言うてへん」
「あー」
『生理的に無理』
「――言うてたな。けど、来てよかったやろ?」
「……まぁ、そういうことにしといたるわ」
砂漠にマットレス hyu @hyu-h2o
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