第2話

「どうした」


「……ここ」


「ここがどうした」


「……よくないところ。……早く……早く離れて!」


最後は絶叫だった。


豊は慌てて車を進めた。


「いったいどうしたんだ?」


「……あそこは、よくないの。昔、人が殺されたの。胸を大きなナイフで刺されて」


「そうか。わかった」


加代子は自称では霊感が強く、たまにこういったことを言う。


ただここまで具体的なことを言ったのは、これが初めてだが。


豊はいつものように肯定した。


が実際のところ豊は、霊感どころか幽霊などの類を一切信じていなかった。


否定すると一もめあるのはわかっているので、適当に合わせているだけだった。


「ふう」


加代子が一息つく。


「大丈夫か?」


「もう大丈夫よ。私はね」


その時、豊は前を見ていて気づかなかったが、どこから取り出したのか、加代子の手には血塗られた大きなナイフが握られていた。



      終

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

いわくあり ツヨシ @kunkunkonkon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ