荒んだ世界で生きる運び屋の少年と、『異世界』の神秘的な少女が出会う。文字通り『価値観も住む世界も違う』二人が運命を共にする王道のボーイ・ミーツ・ガール、そして冒険活劇ですね。
砂塵と硝煙の匂いがしそうな荒廃世界に旅は始まり、そこに花を信仰する世界のファンタジックな情景が交錯する様は、とてもワクワクさせられます。異世界の騎兵隊が立ち塞がる、泥臭く無骨なジープの旅を描きながら、美しい花を巡る優しい物語の一面もあり、緩急織り交ぜて飽きさせません。
とにかく読んでいて気持ちが良い物語なんですね。描写に雑味が無くてすらすら読めるリーダビリティ。秀逸な短編のお手本みたいなお話だと思います。
この物語において、何故これほどまで『花』が重要な意味を持つのか。漢らしい少年と健気な少女の冒険を追い、ぜひ多くの人にそれを見届けてほしいですね。
滅んだあとの世界と繋がった異世界。
砂漠をジープで走る少年と、それを追う騎馬隊。
シーンの一つ一つが、まるで絵画のような。
”絵”になるものばかりで、決して描写に全振りをしているわけでもないのに、情景が目に浮かんでしまう。
その巧みさに引き込まれ、気付いたときには少年と少女の冒険に夢中となってしまいます。
お話の展開も無理なく、この分量で綺麗に仕上げられていて。
かつアクションシーンでの緊張感、二人の微笑ましいやり取りと魅力たっぷりの作品です。
私は雑談の方を見ていなかったのでこれから確認しようと思いますが、この映画のような一本、作り方まで公開しているみたい!?
ともあれ、ひと時を映画のような世界で過ごしてはいかがでしょうか。
おすすめです!
全面核戦争後の世界、すでに国家は解体され、まさに世も末。
そんな世界でジープを相棒とするワイルドな運び屋さんが異世界に運ぶのはなんと、きれいなお花!
しかもそのお花を狙って異世界の騎士たちが立ちふさがる!どうする運び屋ヤマト!
さて、この作品の見どころは広大な世界観と、描写の美しさ。
花が命より大事な世界での命の在り方には考えさせられました。
また荒涼とした大地に花の美しさもさることながら、読めば一枚絵のように美しさにはっとするシーンが必ず見つけられるよ。
さて、あなたのおすすめシーンはどこになるだろう。
ヒロインの花の巫女はドジっ子で可愛い。でも主人公を守るために命より大事な花を差し出す胆力の持ち主。健気でぐっときます。
そして予言。ラストの衝撃にきっとあなたは、ドキッとする!
異世界と繋がった世界。運び屋のヤマトは愛車のジープに乗って、依頼品の花を異世界へと運んでいた。
そのヤマトを襲う異世界の騎兵たち。どうやら狙いは依頼品の花らしい。
異世界では命よりも花が大切なことは知っているヤマトだが、果たして騎兵たちはどうしてそこまで執拗に依頼品の花を狙うのか?
花が何故そこまで大切なのか?
そして運んでいる花がどういう意味を持つのか?
それらを知った時、きっと貴方の胸に熱いものが去来する。
なお今作の執筆過程などが同作者のコラム「へべ雑談」にて公開中。
どのようにして今作が生まれたのかなどが詳細に分かるので興味がある人は是非そちらも。
この物語を書くべきだと煽った責任と思い読んだが、煽って良かったと心から思う次第である。
言ってしまえば、ボーイ・ミーツ・ガール。
主人公の少年は勇者でもなく、車の運転が上手いくらいで、特殊能力を持っているわけでもない。
ヒロインである少女も、巫女という立場にはあるが、不思議な力で少年を導くなんてこともない。
『花』が二人を結び付け、地球と異世界を疾走する。
『日帰り異世界ファンタジー』と聞いて、テンプレに走るのではなく、その世界観、とりわけ価値観に重きをおいて構築していく作者の手腕には脱帽。
どうやってこの物語を生み出したのか、その詳細が語られている雑記も一読すると、より楽しめるのではないだろうか。
そちらで作者自身も語っているが、後半、スピード感はあるものの、どこか物足りなさを感じてしまう。
贅沢な話とは思いつつ、このレビューの時点では第一稿とのことなので、加筆されることを期待する。
※14000字弱の第一稿を読んでのレビューです。
本作品は、『へべ雑談』の中で語られているリアルタイム・メイキングと連動している作品です。と同時に、日帰り異世界20000字上限コンテストも視野に入れた上で書かれたものでもあります。
で、リアルタイム・メイキングで練られていた設定が、かなりガッツリしたもので、つまりはきちんと詰めたものだということなのですが、その分設定量が多くなっていて、これ20000字で書ききれるのかな、という心配もありました。
しかし14000字弱でできあがった第一稿を見てみると……
複雑な設定をきっちり盛り込みつつも、ちゃんと楽しんで読める作品になっているじゃあありませんか。
さらに、プロットの段階ではさほど魅力があると思えなかったヒロインが、いい感じに魅力的に描けています。まあこれは単に作者の表現力が優れていたってことなんでしょうけど。
まあ確かに全体として描写が薄いというか展開が駆け足な感じはするのですが、そこは上限20000字のところでの14000字弱なので、書き足しは可能です。
恐らく、日帰り異世界コンテストの中でも、異彩を放つ作品となるはず。