人魚とオピネル〈2〉
〈2〉
靴ずれがかさぶたになって今にもはがれそうでかゆい。新しい靴でもないのにどうして? 靴の中で靴下がぬげてしまって、かかとがこすれているのだ。スニーカーの内側は毛羽立っている。かゆみはチリチリ肌を走った。
母を駅まで見送った。姉は起きられなかった。
「気をつけてね」
母は念押した。旅に出るのは母のほうなのに? たぶん戸締りや火の元を心配した。
七月。雨は止んだが風はべたついて、泳いでいるみたいに蒸していた。早く帰ってはだしになろう、それでほんとうに水風呂で泳いでしまおう。陸の上は過ごしづらい。中学を忌避してなお。
水風呂には明かりをつけずに浸かる。iPod touchは濡れないようドアの向こうで歌わせる。冷たさに身体がこわばるのは最初だけ、すぐに慣れてしまう。靴ずれも少しも滲みない。
ゆっくり手足を伸ばしてゆき、仰向けのまま水中へ沈む。水と身体の境界はあっというまに薄れた。そうっとまぶたを開けあぶくを吐く。水面はゆらめき、ふくらんでゆく。風呂場いっぱいに満たされ、ドアも壁も抜けて団地全部が水の中で、運河とあわさって東京湾と溶け合って……、そうであってもいい。束の間、陸から出てゆくことは気持ちいい。ヒトと水とを行ったり来たりするから人魚かもしれない。そうであったらいい。
iPod touchは父のお古だ。LINEもインターネットも、Wi-Fiの飛んでいるところならタダで使える。スマホは高校に入ったらねと母は約束してくれた。でも高校に行きたいかというとわからない。
父がかつて聴いていた音楽のいくつかはそのままになっており、タイトルが入っていないものばかりだ。トラック1とか不明なアルバムとか、父はきちんと名前を与えず放り出してしまった。父と母が離婚したのはあたしが小学校に上がる前だから、紀元前。
「不明なアルバム」のトラック13が好き。ピアノの音が鳴り、男のひとの声がかすれ気味に歌う。外国のひとだろう。あーわあーわ。ことばは全然ききとれない。
すりガラスの向こうは白っぽくひかって見えた。
そうしたら、誰かのがなり声に邪魔された。
「火事だ」「火事だよ」
風呂場は団地の廊下側だから声も駈け出す音もハッキリきこえた。うそだろ、はだかで死にたくない。学校をずる休みしている罰だとしてもひどい。
「塔子ちゃん、大変、火事だって」
姉を呼んだ。まだ寝ていた。おなかから下がタオルケットにくるまれ、白い腕や胸が布団に流れていた。水の外でも姉は人魚みたいなものだと思った。
「なに、うそ」
「早く早く」
あわてて外に出たら同じようにきょろきょろしている人たちが幾人もいた。この団地、こんなに人がいたんだな。あたまの奥はのんびりしている。つまり多少の予感はあったのだ。そうして誰かが指差すほうを見やれば、煙はずいぶん遠かった。
「うちの団地じゃないじゃん」
姉はどこかがっかりしたふうで言った。
「なんだ」
予感をなぞって、ただしく他人事になった。
予感はあったのに、びしょぬれ髪のまま、お気に入りのTシャツをかぶって飛び出していた。姉が修学旅行みやげにくれたもので〝Thank you God〟とプリントされている。なぜ感謝しているのかイミがわからないけどロゴや色の感じはかっこいい。姉も咄嗟に身につけたのは買ったばかりのワンピースだった。姉がほんとうに慌てたのかそうでなかったのかわからない。むわっと風が吹いて、ワンピースのボーダーが揺れた。火事とは無関係の熱風だ。びいいいいとセミが叫んでいた。
「寝る」
姉はさっさと部屋に戻った。手にはクロッキー帳があった。
姉は絵を描くひとだ。アクリル絵の具やときどき油、ラフに描くときはダーマトグラフを好む。部屋にはカンバスやスケッチブックが無造作に積まれている。姉はいざというとき何か掴んで飛び出すことができるのだなあと思った。
それならあたしがもっとも大事にしているものは、このTシャツということになるのだろうか。財布でもiPod touchでもぬいぐるみでもなかった。あたし、なにかどうぶつでも飼っていればよかった。
黒い煙は浜辺公園の向こう岸だろう。ここから見えるのだからおおきな火事であることはまちがいない。工場か、倉庫か。まもなくサイレンが鳴り響いた。
そのとき、背後からくぐもった悲鳴がきこえたのだ。
「——やべえ、誰か来て」
男の人の声だった。
「火事なんて、うそだろ、まいったな」
202号室、おとなりさんだ。声はトイレの小窓からだった。高いところにあるから中は見えない。なんだか泣きそうな声だった。思わず声をかけてしまった。
「大丈夫ですか」
普段だったらそんなことはしない。たぶん火事だから。母が留守にしているから。お気に入りのTシャツだから。寝る、と言った姉がにやりと笑っていたから。
おとなりさんは最近引っ越してきた人で、着ぐるみみたいにおおきい。つまり声をかけたのは火事場の馬鹿力で、ほのおは遠くても勝手に力だけ湧いてしまうこともあるらしい。ひゃっと驚いた声がした。
「どちらさんですか、あの、おれは平気なんですけど、奥に人魚が、」
人魚?
「人魚ってなんですか」
「おれがいないと逃げられないんだよ、ええと、紙ありますか」
言っていることがぜんぜんわからなかった。あーわあーわの歌と一緒だ。
「あたし、となりの望月です。火事はうちの団地じゃないです。大丈夫です」
「ああそうすか、びっくりした……」
ふうっと大げさに息をついた。ような音がした。
「あのさ、もののついでというか、女の子にこんなこと頼むのアレなんだけどさ、トイレットペーパー持ってきてくれませんか」
紙がなくなっちゃって……、おとなりさんはぼそぼそこぼした。なるほど。その状態で火事になったら悲鳴をあげたくもなる。あたしも姉も思わず一張羅で飛び出した。同じように、うそだろ、とつぶやいた。
髪から水滴がぽたぽた落ちる。あたしだって水から上がったばかりの人魚かもしれない。
小窓に新しいトイレットペーパーをねじこんだ。やがておとなりさんは玄関から出てくると、とても丁寧に礼を言った。
「ありがとう、助かった。死ぬかと思った。いや火事ではなかったんだけどさ、うん、ともかくありがとうね」
おおきな身体を律儀に折り曲げ、山が動いたみたいだ。目元が赤い。本当に泣いていたのか?
「あ」
おとなりさんのTシャツには〝God is dead〟とプリントされていた。神さまありがとう、神は死んだ。向かい合うちぐはぐな言葉はしかし矛盾してはいないのだと、なぜかわかった。そんなふうに〝リンダ〟と知り合った。
おとなりさんを初めて見たのはふた月くらい前だ。
「なんかぬいぐるみみたいだよね。いつも荷物多いけど一人暮らしじゃないのかな。でもほかに誰か出入りしている様子はないよね」
姉はすぐ探偵をはじめる。
たしかに身体がおおきくて、着ぐるみあるいは宇宙服のようにみえた。いつも派手なTシャツを着ている。ぬうっと重そうな身体をふわふわ左右に揺すって歩く。まるで月面歩行だ。いいなあと思った。ここは重力がきつすぎる。
ギムキョーイクとは受ける側に義務はないらしい。通知表はまっしろのまま二年に進級できた。このまま逃げ切りてえなと思う。
あとで母が言った。
「ごみ捨て場でとなりのおにいさんとあいさつしたよ。独り身で2DKは優雅だよねって話しちゃった」
うちは母と姉と三人だから、優雅でないのだろう。
東京都大田区平和島。倉庫や工場が並び、東京湾と同じ成分の運河に囲まれている。運河は本当は海なのだ。埋め立てた島がいくつもあるから運河ということになっているだけ。運河をさかのぼると競艇場で、レースのある日はおじさんやおじいさんたちがとぼとぼ列をなす。あのひとたちは勝負師だと姉は言う。全体的にくすんだ色の島だ。いや、島ではない。運河は途中を埋め立てて公園になっているから平和島はしっかり地続きだった。運河も島も、呼び名はみんな嘘っぱち。
うちの団地は埋め立てた島の付け根、大森側に位置している。クリーム色が白っぽく褪せた五階建てで、このあたりに林立する区営団地のうちのひとつだ。区営団地にはお化け屋敷同然のぼろもあれば、きれいに建て替えられたものもある。我が家は三人だから「資格があって」「優先順位が高い」らしい。母は言う。
「帰る実家はすぐそばにあるけど、肩身狭くないほうがいいもんね」
母は美容師で、大森駅前のお店で働いている。店のホームページには写真が載っていてトップスタイリストと肩書きされていた。でもトップスタイリストは店に何人もいて、さらに上にはディレクターというひとたちもいるから複雑だ。いずれにせよ朝早く夜遅い。
今日から社員旅行でセブ島に行っている。三泊四日だ。母が社員旅行に行くのも日本から出るのも初めてだ。姉がつよく勧めた。
「なんだか私たちがお母さんのこと行かせないみたいじゃん。私も百子もなんにもしてなくてどこにも行きたくないからお金かかんないんだし、好きに行けばいいって言ってんの」
「べつにそういうわけじゃないでしょ。なんであんたはいつもそうエラそうなのよ」
「エラいのはそっちでしょ。お母さんは毎日毎日仕事しててエラいですね」
「バカにしてんの?」
たまには楽しんでおいでよ、私たちのことは心配しないで、姉はそう言いたいはずなのにどうしてかひどい喧嘩になっていた。
姉と母はしょっちゅう怒鳴り合う。どちらかがどちらかをぶっころすまで決着がつかないんじゃないかというくらいぼこぼこにやり合う。まぎれもなく戦争で、どうしたものかどっちにつくべきかとあたしが逡巡しているうちにふたりはけろっとして一緒にプリンなんか食べているのだからわけがわからない。焼け野原はすぐ耕される。
姉と二人で留守番はわくわくした。旅に出るのはあたしたちだと思った。
「おれ山田倫太郎ね、略してリンダっていうんだ」
おとなりさんはあだ名も教えてくれた。それは略じゃないだろと思ったけど言わないでおいた。リンダ。
恩にきるよ、今度なにかお礼をさせてねと言われたので、それなら今がいいんですけどと言ってみたのだ。火事場の馬鹿力、いや向かい合うTシャツのおかげだ。
「じゃあ桃もらってくれない? 缶詰だけどさ。いっぱいあって食べきれないから、よかったら」
「あたし、ももこって名前です」
だからなんだろう。何を言っているんだろう。馬鹿力がすぎた。かっと身体を熱が駆けた。
「ああ、そう?」
しかしリンダはまばたき、にこにこしていた。
「字は桃じゃないんですけど……。あの、うちでお茶でもしませんか」
自分じゃない誰かがしゃべっているみたいで頬や手のひらが熱い。さっきの人魚とはなんだろう。
姉に声をかけたら興味のなさそうにタオルケットの中から生返事した。母の留守中に男のひとを家に上げるのはよくない気もしたが、姉の許可があればいい。
リンダが座ると椅子もテーブルもちいさく見えた。母が作っておいてくれたカレーのにおいがこもって、小さな虫が、ひゅっ、ひゅっ、と旋回している。ベランダの網戸が小さく破れているのだ。風と一緒に余計な客まで招いてしまう。
「望月百子です」
「もこちゃんね」
勝手に名付けられてしまった。もこ?
「ももこって名前はだいたい〝もこ〟ってあだ名にならない?」
ならない。あだ名なんてもってなかった。でも悪くない気がした。もこ。
「なんで桃缶がたくさんあるんですか」
「ああ、知り合いが死んじゃって」
意味、わからない。
「ええとね、お葬式に参列した人にくれるんだよ。缶詰で飾りをつくるんだよね。こう、缶をまるく並べてお花みたいにするんだ。ただの花よりあとで食べられるほうがいいし、くだものかごって傷みやすいもんな。でもせっかく缶詰にするんなら、くだものにこだわんなくてもいいのにね」
Tシャツの〝God is dead〟を眺めた。この人は神さまだけでなく知り合いも死んでしまったのだ。こういうとき、なんて言うんだっけ。
姉が出てきて言った。あくび混じりだ。
「くだものだと、真剣にひとを弔っている気分になるんじゃないですか」
部屋着のタンクトップに着替えていた。姉はあたしのとなりに座った。
「うん、たしかにツナ缶とか鯖缶だと真剣味に欠けるね」
おじゃましてますとリンダは笑った。あ、そうだ。
「ごしゅうしょうさまです」
遅れて思い出したせりふは呪文みたいだった。リンダは律儀にうなずいた。
「どうもありがとう」
桃缶はよく冷えていた。黄桃と白桃はどちらもつやつや光り、きょうだいみたいに見えた。文句を言っていたのにリンダはいかにもうまそうに口に運んだ。へんな人だと思った。でも缶切りを使うのはとても上手かった。かりかりかりかり、速かったのだ。手が大きいから?
「塔子さんね。じゃあお姉さんはとこちゃんなんだ」
リンダはまた勝手にあだ名をつけた。姉は気にもとめない。桃を食べながら言う。
「二十歳です」
姉はすぐ嘘をつく。ほんとうは十八だ。
「大学生?」
「ちがう。なんにもしてない」
姉は高校卒業後、何にも所属しなかった。でもなんにもしてなくはない、絵を描くし、マンガを読むし、気まぐれにアイロンがけもする。
「おれ三十六だよ。なんにもしてないのは同じだね」
父と三歳差だ。離婚した父は母より歳下で、今は実家の工務店を手伝っている。毎年年賀状が届く。こういう〝God is dead〟のひとがあたしの父親だったら? 全然想像がつかない。うちにおとーさんはいません、母はいつも言う。
姉が尋ねた。
「働いてないの?」
「勤めてたバイク屋がつぶれちゃったんだよ。いま失業手当もらってる。せっかくだからもらうもんもらって、しばらく人魚とバカンスにしようと思ってさ」
また人魚だ。姉は聞き流した。失業手当というのがよくわからないが、つまりヒマなんだろう。
「まあ退職金代わりにトライクをもらったし、いいんだけどね」
「トライクって何ですか」
「三輪のスクーター。ちょっと乗り方難しいけど車輪がみっつあるからバイクより転びにくいやつ。普通免許で乗れるし、ヘルメットかぶんなくてもいい」
よくわからなかった。身の回りにないものを想像するのは難しい。
外ではサイレンが鳴っていた。リンダは首を伸ばした。
「火事、相当大きいみたいだな」
「すごい煙だった。たぶんテレビのニュースになる」
姉は言った。ちょっと興奮しているみたいに見えた。他人事だからだ。平和島の周りには幅広の運河がある。ほのおを畏れる理由はなかった。
「見に行ってくる」
桃を食べ終わった姉は決然と言い放ち出かけて行った。いつも突拍子がないのだ。
「お姉ちゃん、面白いね」
リンダは笑った。いやいやそちらこそ、言おうとしてやめた。何かあたしも面白いことを言いたくなった。
「あたし、学校行ってないの」
口にしたら、脇の下にじわっと汗が湧いた。
「去年の夏休みからそのまま、一日も出席してないの」
大ボラだ。たしかにこのところ遠のいてはいるが、まるまる一年休んでいるわけではない。つまり姉の真似だった。姉のホラ吹きはあたしを勇気づける。もし一年間一日も学校に行かなかったのなら、いろいろのことをなかったことにできる。たぶん学校は来週から夏休みだ。
「学校でいじめられてるの。男子からも女子からも」
事実でないことは言いやすい。リンダがよく知らない人だからというのもあるかもしれない。知らない人とのおしゃべりはその場しのぎでいいから気楽だ。一貫性を求められず、上半身がヒトで下半身がサカナであってもゆるされる。
それでも瞬間、喉の奥は重たくなった。渇いた。学校を休んだって背中にはクラスメイトの視線がはりついている。みみこちゃん。あたしは〝偶然の加害者〟だ。
リンダは静かにまばたいた。
「そうか、それはしんどいね」
そうして桃缶のシロップをきれいに飲み干すと、テーブルの上に手を広げた。
「何?」
「握手」
言われるまま手を出してみる。おおきな手にぎゅっと握られた。
「これで、もこちゃんとおれは友だちな」
リンダの手は分厚く熱い。なのにかさついて、あたしと逆だと思った。
「もこちゃんは友だちがひとり増えたから、そのぶんひとりぶっころしてもいいことにしよう」
「ぶっころす?」
このひと何を言っているんだろう? にこにこしているのにずいぶん物騒だ。
「もちろん本当にぶっころしたらケーサツに捕まっちゃうから気分の問題だけどさ。あるいは怒られない程度にぶっとばすんでもいいね。誰かのことを嫌いになったり嫌われたりするのはとても疲れるけど、味方はひとりずつ増えてくかもしんない。そのぶんひとりずつ〝なきもの〟にしていいなら、少しは気が楽じゃない?」
全然わからなかった。なにしろほんとうはいじめられているというわけでもない。
〝God is dead〟
もしかしたらリンダは、自ら神さまをぶっころしたのかもしれないなと思った。
「ああ、ごめんな」
リンダはパッと手を離した。
「いきなり手なんか握られたら気持ち悪いよな」
そんなことはない。どうしてそう言うのだろう。あたしは口を閉じると自然とへの字になってしまう。不機嫌そうに見えるから注意しなさいよ、母はいつも言う。リンダの真似をしてシロップを飲んだ。甘さよりも冷たさが喉を通過した。
「どうもおれ、人魚の世話してるもんだから、癖になってて」
「……人魚ってなんですか」
「ま、おとなりさんだから、何か困ったことがあったら言ってな。おれ頭わるいからあんまり役に立たないかもだけど」
あたしの声は小さくて、リンダにはききとれなかったらしい。身長がぜんぜんちがうから声が届きにくいのだ。人魚の世話ってなんだ。たしかにおおきな手だからなんだってできそうには見えた。
「パンみたい」
「何が?」
思わず口に出ていた。リンダも拾った。どうでもいい会話ばかり成立する。
「手がおおきいなって思った」
「ああ、身体がでかいからな。パンかあ。何パン?」
なんとなくクリームパンがあたまに浮かんだ。グローブみたいなどうぶつの手みたいな、ぼってり膨らんだかたち。
「ジャムパン」
でも、口から出たのはまたしてもでたらめだった。どうしてかそう言いたくなった。これも姉の真似だろうか。ジャムパンってどんなだっけ。
「はあ、たしかに似てるかもしれない」
リンダは勝手に納得した。世の中にはこういうジャムパンがあるらしい。三十六年生きていればいろいろなパンと出会うのだろう。
「もこちゃんの手は大福みたいだね」
ほめているのかそうでないのかわからなかった。大福は好き。豆大福が好き。
「あの、そのTシャツかっこいいですね。書いてある言葉、どういうイミですか」
「おれ英語読めないからわかんない」
もしかしたら人魚とは、架空の生きものではないのだろうか。大田区平和島に存在してもおかしくないのだろうか。ギムキョーイクで当然習うことかもしれない、あたしが中学に行かないから知らないだけで。
夜になって母からLINEがきた。ホテルの中はWi-Fiが飛んでいるからいつもどおり使えるらしい。きれいな海の写真が添付されていた。色とりどりの魚がいるだろう。人魚は?
なんとなく火事のことは伝えないでおいた。
人魚とオピネル オカワダアキナ @Okwdznr
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