一言で言うと、作者自身が楽しんで書いた作品、だと思う。
メタフィクションの設定は中々思い付けないアイデアだと思う。冒涜から、そう言う展開だが、設定の妙には膝を打った。
読んでいて感じたが、メタフィクションの設定は興味深いが、現実と作中を行ったり来たりするので、没頭しずらくなる難点を抱えている。本作品はコントつぽく仕上げる事で、その難点が目立たないよう工夫している。
そう言えば、40年ほど前のハリウッド映画で、ネバーエンディング・ストーリーなる、主人公が読者として絵本の世界に没頭する作品が上映された。映像時間の大半は絵本の中の物語なのだが、読者である主人公が感激すると、映画の場面も現実に戻る。映画の視聴者にとっては非常にストレスの溜まる映画だった。でも、当時の特撮としては映像美が秀逸で、パート2まで制作された。
話が脇道に逸れたが、そんな構造的困難を如何なる方法で克服しようと試みたか、それを確認するのも、本作品を読む醍醐味だろう。
星の数は、偶々直前に読んだ作品が凄かったので、相対的に3つ付ける気にならなかったのが真相。本作品にとっては不運としか言いようが無い。
現時点での最新話「第三話 霧島十歩の落命 ⑤」までの感想となります。
所謂メタ探偵というと、真っ先に思い浮かぶのは〈神通理気〉の使い手・九十九十九でしょう(異論は大いに認めますがw)。ただ、あちらがその誇大広告的なネーミングに反し実際はごくごく普通の推理方法であるのに比べ、こちらは正真正銘本物のメタ探偵です。何せ〈地の文〉にツッコミを入れられるのですから!
登場人物にツッコミを入れる地の文というメタ小説的表現は他の作品でも時折見かけますが、その逆となると途端に少なくなります。あまりに技巧が過ぎて、ネタ色が強くなってしまうのです。
というわけで本作の出番です。
奇手にして禁じ手、地の文を読んで事件を解決するという離れ業を平然とやってのける探偵に相応しいゲスっぷり。そして脇を固める助手も、性格の異なる双子を配することで見事なバランスを保っています。
何よりミステリ読みの裏をかく展開の妙、これに尽きます!
探偵に今後の方針を強要する地の文。地の文に回想シーンを強要する探偵。
不可謬たる地の文の特権と、それを脅かす登場人物の相剋……これが面白くならないわけがない!
世の中に名探偵は数多い。
登場して即座に事件を解決する者もいれば、事件が起こる前に未然に解決する探偵なんかもいて、色々バリエーション豊かなのだが、本作に登場するのはそれらの名探偵以上とも以下ともいえる特殊な探偵だ。
その名もメタフィクション探偵!
本作の主人公・霧島十歩は小説の登場人物であるにもかかわらず、作中の『地の文』に書いてあることを読むことができるのだ。
彼はその能力を駆使することで地の文とごく普通に会話のやり取りをし、時には口喧嘩をすることもあるし、あるいは地の文から突然の死の宣告を受けることさえあるのだ!
もちろんそんな不毛な会話ばかりを繰り広げるばかりではない。
事件の真相に近づくため、無理やり回想シーンに突入して犯行当時の様子を直接「読む」こともあれば、事件に関わる証拠や目撃者のありかを地の文から聞き出すなど、掟破りの裏技を使って、十歩はたちまち真実にたどり着くのだ。
しかし、そんなイカサマが使えるにもかかわらず、直接事件の真相を教えてもらうという無粋な真似はせずに、あくまで事件のヒントや手がかりをもらったりするだけに留めているからなにかと奥ゆかしい。
おかげで読者もちゃんと推理を楽しむことができるのでご安心ください。
探偵なのにイマイチパッとしない十歩と、容赦ないツッコミを入れる地の文の会話(?)は非常に面白く、ちょっと変わったミステリーが読みたいという方にお勧めです!
(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=柿崎 憲)
突飛な能力を持つ探偵が事件を解決していくライトミステリーです。
毎回どうもやる気に欠ける探偵を牽引する最強の力、それは『地の文』。
たとえ探偵が拒もうとも地の文が彼を事件へと導き、たとえ探偵が証拠を見つけられなくとも地の文みずからが手がかりを示してしまう――。
弱者に尊大に振る舞うが、権力には媚びへつらい、地の文には文句を垂れる一方で、読者の視線を気にする名探偵、霧島十歩。
助手の秋月姉弟を引きつれ、受けた事件は何だかんだでだいたい解決! でも、決めるところはしっかり決めるぞ! なんだこの探偵!
昭和初期の時代を感じさせるどこかセピア調の雰囲気も味わいがあります。
ツッコミを入れながら読めるバカミスです。
おススメです!