推理力や観察力を超える探偵史上最強の能力。それは地の文を読む力!

世の中に名探偵は数多い。
登場して即座に事件を解決する者もいれば、事件が起こる前に未然に解決する探偵なんかもいて、色々バリエーション豊かなのだが、本作に登場するのはそれらの名探偵以上とも以下ともいえる特殊な探偵だ。
その名もメタフィクション探偵!

本作の主人公・霧島十歩は小説の登場人物であるにもかかわらず、作中の『地の文』に書いてあることを読むことができるのだ。
彼はその能力を駆使することで地の文とごく普通に会話のやり取りをし、時には口喧嘩をすることもあるし、あるいは地の文から突然の死の宣告を受けることさえあるのだ!  

もちろんそんな不毛な会話ばかりを繰り広げるばかりではない。
事件の真相に近づくため、無理やり回想シーンに突入して犯行当時の様子を直接「読む」こともあれば、事件に関わる証拠や目撃者のありかを地の文から聞き出すなど、掟破りの裏技を使って、十歩はたちまち真実にたどり着くのだ。

しかし、そんなイカサマが使えるにもかかわらず、直接事件の真相を教えてもらうという無粋な真似はせずに、あくまで事件のヒントや手がかりをもらったりするだけに留めているからなにかと奥ゆかしい。
おかげで読者もちゃんと推理を楽しむことができるのでご安心ください。

探偵なのにイマイチパッとしない十歩と、容赦ないツッコミを入れる地の文の会話(?)は非常に面白く、ちょっと変わったミステリーが読みたいという方にお勧めです!

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=柿崎 憲)

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