天才インコも知らない言葉は喋れない……

 仕事中毒であるOLの「私」はある日偶然訪れたペットショップで見かけたインコに一目ぼれしてしまう。

 毎日が仕事で手いっぱいで、趣味らしい趣味と言えば人気のテーマパークに通うことぐらい。そんな「私」の日常が新しくできた同居人によって一気に充実していく。毎日小屋の掃除をして一緒に食事をとり撮影会も欠かさない。

 やがて「私」の愛情の甲斐もあってかデスティニーと名付けられたインコはついに言葉も喋るように! しかし、それは彼女が教えた言葉ではなくて……。

 前後編で構成される本作品。前編では「私」とデスティニーの何気ない日常が語られるだけだが、後編からは一気に急転直下。デスティニーが発するある言葉が作品の雰囲気をガラリと変えてしまい、さらにラストは思わぬ角度からの襲撃が! 

 改めて前編を読み直すと、意外な部分が最後に最大限の恐怖を与えるための布石になっていて、短くシンプルな内容ゆえに作者の技巧が際立つ一作です。


(「動物と暮らす」4選/文=柿崎 憲)

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