第2話

 これは実体験出来立てホヤホヤな話です。


 ある意味怖いですが、所詮僕の身に起こった程度の不思議な話なので、皆様が鼻で笑える程度だと言うことをご了承下さい。


 僕は昔からよく見間違いが多いんですよ。

 道路とかで人や動物がいる、避けなきゃ! っと思うけど、近くに行ったら何もなかったり、実家で人影が視線の端に入ってきたから誰だと思って見ても誰もいなかったり、影が現れて消えたり、僕も僕で日常的に体験している故、それ程不思議なことだと言う感覚はないです。取り分け、その際で不思議な体験をしたことも皆無です。

 因みに、今も特にないです。


 ふと、少し前に友人にこの話をしたら、

それ幽霊じゃね?

 と言われて、あー。だとしたら、なんと言う地味な心霊現象だな……。と、思ったぐらいです。


 見間違いは1日1回ぐらいの頻度、同じ場所で見間違う事も多々ありますが、毎回本当に人間が居たりすると困るので律儀に確認しています。

 霊感があるタイプなのかないタイプなのかなんて、それこそ自分では知らんですし、あってもなくても二回目に確認したら居ないとなると、普通に見間違いと何も変わらないと思うタイプの人間です。


 さて、そんなタイプの人間な癖に、先程かなり衝撃的な自称で事象な『見間違い』に出会いました。


 それは、会社で煙草を吸うために、普段体力的に絶対に使わない階段をあがってた時の事です。

 うちの喫煙所は最上階にあって、場所柄、よく子供の幽霊が出ると会社内で有名なスポット。


 夜中に煙草吸ってると上から子供のはしゃぐ楽しげな声が聞こえてくんですよ。

 僕も聞いた事ありますが、無邪気で楽しそうな声と足音に、残業をしている社畜の心はゴリゴリ削られます。

 怖いとかよりは、純粋に羨ましいと思ってしまいますね。


 そんな事で、夜遅くになると敬遠されてしまいがちな喫煙所なんですけど、昼間は人がすし詰め状態になってしまい、中々入れない人気スポットとなってます。

 会社の喫煙所は狭いんですよね。

 隔離もされてますし。


 まあ、そんなことは置いといて。

 そんな喫煙室に向かう途中に起きた話です。

 エレベーターが運悪く点検中でして、仕方が無しにこんな暑い中、嫌々階段をあがっていったら、踊り場に人影見えたんですよ。

 近くに行っても見えたんです。

 パチパチ瞬きしても見えたんです。

 だから取り敢えず会釈して通りすぎたんですよ。


 お疲れ様でーす。って。


 別に知ってる人じゃないけども。

 うちの会社は、普段着の人も作業着の人も制服な人もいるので、業者や社員かもカードをマジマジと見たりしなければ分からないんです。

 何で、人がいたら取り敢えず会釈しちゃえの精神です。


 大抵は、会釈やら何やら返ってくるんですが、その時は相手の方は棒立ちだったと思います。

 何も返ってこないなんて、珍しいな。そんな事を思いながら、隣を通り過ぎた時、直ぐに後ろから追いかけてきた後輩くんに声掛けられたです。


「先輩、一人で何してるんですか」って。


 いやいやいや、そこの人に挨拶をといいかけて横を見ても誰もいない。

 あれ? いつの間にか下がったのか?

 とも思ったけど、後輩くんが声をかける前には絶対にいたはずなんです。


 上に上がっても下に下りても、後輩くんは見えるはずだし、自分も隣を通り過ぎた人が動く気配とか、普通気付くはずですよね。

 思わず、後輩くんに、さっき、ここに人いたよね? と聞いたんです。


 すると、


「俺見てないですよ。どんな人がいたんですか?」と聞かれて、全く思い出せない。

性別も、服装も、何もかも。

 ただ、そこに、誰かが、立っていた。

 自分の中に残っているのは、ただそれだけ。


 ま、まさか、これは、友達が言う本当に幽霊なのでは……?


 と僕が言ったら、後輩くんが、


「先輩、太いんで脳の血栓とかじゃないですか?」


 と、きっぱり言われたのが最大の恐怖でした。

 例え、あれが幽霊だろうがなんだろうが、僕は正直な人間程怖いものはないなとおもいました。

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不思議な子供 富升針清 @crlss

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