人を想うこと。それは、相手の何から何までを支えればいい…わけじゃない。

容姿はとびきり可愛いのに、フタを開けると超ズボラ。汚部屋に住み、ジャージでゴロゴロ…そしてそんな自分自身を改める気などさらさらない女子大生、ちえり。
そんなちえりの前にある日突然現れたのは、漆黒の翼と森の奥の湖のような美しい瞳をした美貌の堕天使、リュカだった。
彼は、ちえりを幸せにするという贖罪を無事に終えることができれば、晴れて天上界へ戻ることができるという。
こうして始まった、ズボラ女子大生ちえりとまめまめしい堕天使リュカのデコボコな同居生活。リュカは天上界へ戻ることができるのか?ちえりは、幸せだと心から思うことができるのか……?

人を幸せにすることとは、何か。これは、爽やかで前向きなコミカルさの中に、そんな大切なメッセージをぎっしり詰め込んだ物語です。

ちえりとリュカの日常と、その中でのやり取りは、とてもコミカルで暖かく、心をくすぐる甘さがたっぷり。私もこんな美しい堕天使と一緒なら…いやいや、こんなにいちいち細かく口出しされちゃたまらない!そんな自分自身の中の葛藤もついでに楽しめてしまいます。
そして、大学で巻き起こる恋の波乱。ライバルは誰?企んでるのは誰?そんなサスペンスのようなスリルは思わず主人公と一緒に頭をひねり、真実がわかる度に一喜一憂するような楽しさに溢れています。

そんな楽しさの奥に流れているのは、人を幸せにすること、心から人を想うことの難しさと苦しさ。本気で人を想うことは、本当は苦しみに満ちたものなのかもしれない……そんなことを、深く思わずにはいられません。

心から人を想うこと。人を幸せにすることの意味。そんな、生きる上で欠かすことのできないたくさんのものを、キラキラと輝くように目の前に見せてくれる、生き生きとした力に満ちた物語です。

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