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 霊は何故生きている人の前に、姿を現すのだろう。

 霊は何故生きている人に、なにかを伝えるのだろう。

 霊は何故、答えを教えてくれないのだろう。

 僕は幼馴染の祖父から、何をお願いされたのだろうか。

 ただ単に、彼とこれからも仲良くいてほしいということだったのだろうか。




 それとも、




 彼が役者になるという話を聞いていたのは、高校時代に再会した時だった。

 それから少しして、中古の外車を持ち始め、レースドライバーのライセンスを取得していた。

 大学に入ると、彼は怪しい行動を取り始め、コンサートのプロモーターとして、僕に近付いた。

 大学生最後の年になると、ついに犯罪に手を染めてしまった。


 もしかしたら、彼の祖父はこうなることを予期していたのかもしれない。

 だからこそ、僕によろしくねと言ったのではないだろうか。

 既に終わってしまった話だ。だから、こんな考察をしたところでどうなるわけでもない。

 ただ、もしそうだとしたら。

 もし僕の想像が正しいのなら。

 僕は彼の祖父の願いを叶えられなかったことになる。

 考え過ぎだろう。この話を聞いた人なら、皆口を揃えてそう言うだろう。

 それでも僕は、考えてしまう。

 もしも。その言葉から始まるまた別の結末を。

 考えてしまうのだ。


 結末は、彼との決別。

 でも、もしも。

 彼ともっと話す機会があったら。

 彼の事情に立ち入っていたら。

 彼の罪を糾弾していたら。

 彼とはまだ普通の知り合いでいられたのだろうか。


 答えはわからない。

 誰も答えられないから。

 死者であっても答えてくれないから。


 この話は全て、本当にあったこと。

 それに僕が、無理矢理に意味を持たせているに過ぎない。

 でも、僕はあの時のことは、何か意味があったと思いたい。


『二十歳になる前に霊をみたら、その後の人生でもまたみえるだろう』

 こんな話を昔聞いた。

 ならば僕は、この後の人生で、少しばかり期待するとしよう。

 また彼の祖父が現れて、僕に答えを教えてくれるまで。








 僕はまた、霊に逢うことを怖いと思いつつ、ほんの少しだけ楽しみにしている。

 一度逢ったのなら、二度目の再会もまた、微笑んで迎えてくれるだろうから。

 そして、僕はその時こう言うだろう。














「あの時の答え合わせをさせてくれ」


 ≪了≫

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霊は答えを教えない。 ミウ天 @miuten

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