epilogue

 季節もいつの間にやらすっかり秋っぽくなった。中間試験も気づいたら終わっていて、毎日何をしに学校にきているのかと問われれば、やっぱり部活をしにきているよねって返してしまえるような、そんな日々。

「そんで最近全巻一気に買い集めちゃってさぁ!」

 三橋が陽気に言う。彼の今日の昼食は購買で買ったカップラーメンだ。醤油系スープの香りが教室に広がっている。

「全何巻あるの?」

 森田少年が、体格に見合う巨大な弁当をつつきながら尋ねる。

「十巻だよ。今度貸すわ」

「その漫画最近アニメ化されたって知ってる?」俺も口を挟む。

「え、まじ? まじなの?」

「おう。てかお前がその漫画知ったのアニメ経由かと思ってたわ」

「あ~……本屋でやけにプッシュされてたのってもしかしてそういうことか~」

「連載当時から二十年以上経ってるけど、今の時代に添ったアレンジが効いてて、でも内容は原作をしっかり読み解いて作ってる感じがして印象よかったな」

「セキヤくん詳しいんだね」ナベさんが感心したように言う。

「俺も好きなんだよ。原作全巻持ってるよ」

「は、まじ? 何で言わなかったんだよ!」

「なんで、って……こっちはお前が話題に出すまで好きなことも知らないわけだし」

 和やかで穏やかな昼下がりの、談笑の風景。


「にしても最近こっちで食うこと多いな、お前」三橋が言う。

「あ、確かにね~。個人的には嬉しいけどね、全員集合って感じでさ」森田が笑う。

 ……そう。

 俺は今、三橋たちと一緒に昼食を取っている。教室で、昼休みを過ごしている。

「なんだなんだ、遂に来たってか、〝倦怠期〟ってヤツがよぉ!」

「……や、違うよ」

 この三人には彼女と付き合い始めた、とは特に言ってはいないけれど、彼女に対する俺の好意そのものは既に伝えてある。

「え、じゃあなんだよ、喧嘩でもしてんのか?」三橋は眉をひそめる。

「それも違う」

「えー、じゃあなんなんだよ」


 ――俺は想像する。真昼の中屋上。快晴の下で笑いながら、昼休みを過ごす二人の少女。

 笑顔も生き方も不器用で、でもだからこそ出逢うことができたふたり。

 世界を見下ろす屋上で、小さな革命をやり遂げたふたり。

 世界でたった三人しか知らない、小さな小さな――大きな革命。

 きっとそれは唯一無二の、掛け替えのない物語で。

 そうしてそこから、始まっていくもの。

 二人を讃える空はきっと。どこまでもどこまでも、突き抜けるほどの青色で。


 そうだ。あいつには、田中真由子には。

 初めての、特別な、大切な、


「友達ができたんだよ、あいつ」

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屋上で望んだ世界:涼宮ハルヒになりたかった女の子の話2 蒼舵 @aokaji_soda

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