この物語には、音楽の熱量と青春の葛藤が詰まっています。二戸坂結香は、自分の姿に自信が持てず、ネットの中で音楽を発信してきました。けれど、ある朝から彼女だけが「別人の顔」を見るようになります。その変化は、彼女の内面に眠っていたものを引きずり出し、音楽という形で外へと解き放っていくことになります。
何かをやりたいと思いながらも、それを表に出せないもどかしさを抱えている結香。内向的で、目立つことが苦手で、それでも心の奥には確かに「やりたいこと」がある。そんな彼女が仲間と出会い、バンドを通じて少しずつ変わっていく過程が、心に響きます。
個性豊かな仲間たちとの掛け合いも見どころです。女ヶ沢ルーシィの押しの強さが、結香の迷いを振り払うようにバンドへと導いていきます。言葉よりも音で語る彼女たちの関係性が、どこか軽快で、それでいて真剣。音楽を作る楽しさと、バンドとしての葛藤がリアルに伝わり、彼女たちの挑戦を応援したくなります。
「幽霊の顔」は、自分がなりたかった理想の姿なのか、それとも違う何かを示しているのか。結香が音楽とともに進んでいく中で、その答えもまた見えてくるのかもしれません。青春の中で揺れ動く想いと、音楽への情熱が響き合う物語です。