独特の文体で語られる、登場人物たちの闇

「ねぇ、地獄ってあると思う?」
人付き合いが苦手で教室でいつも孤独に本を読んでいる”僕”にある日、社交的で皆から好かれている女子、大木が話しかけてきます。一見対極にある二人の関係が不思議な発展を見せ、謎めいた大木の秘密が明らかになると、物語は大きな展開を見せます。

約7000字の短編小説ですが、コンパクトに起承転結がまとめらていると思います。一人称で語られる”僕”の語り口が、決して難しい言葉を使うわけでわないけれど、独特の道を行くような文体で、所々に出てくる「死」を連想させるような描写も作品の中でダークな空気を形成しています。個人的に読み返したくなるような言い回しもあって、文体自体も楽しめました。