プロローグ Reaper 03

 兎は、抱えていた骸三つをそのまま置く。

「へぇ、これがターゲットなの?」

 蝶は翅を軽く動かしながら訊く。

「うん、パパっと終わらせるのもアレだから少し遊んじゃった」

「ほどほどにしろよ、他人にバレたらどうすんだよ」

大上おおうえさん、大丈夫だって。バレないようにやってるし」

 大上と呼ばれた狼は、大きくため息をついて続ける。

「いつもの優希ならすぐに終わらせてるのにさぁ、なんかこいつらと確執でもあんの?」

「うーん、こいつらと会ったことあるんだよね、初対面の癖に殴るとかいう世紀末をかまされたから、ムカついて」

「ああ、それでユウキが遊んであげてたのね」

 軽く三人(匹?)は語り合ってるが、人の命が関わっていることを忘れてはならない。


「こいつらはどうすればいいって?」

「そいつら持ってボスん所まで来いってさ。帰還したこと伝えとかないと、怒られるぞー」

「うん、じゃあ行ってくるね」

 そういうと、兎は再び骸を抱えて奥の部屋へ向かった。


「ボス、帰還しました」

「卯花くんか、まあ入りなよ」

 ドアを開ける。その中には、今度はライオンの獣人、獅子人ウェアライオンがいた。

「仕事、お疲れさま」

「こいつら、どうすりゃいいです?」

「ああ、ターゲットはこちらで処理しとくよ。それより、任務に時間をかけたんだって?」

 ライオンは、顔をややしかめる。

「…まあ、はい」

「…いや、人に見られてないから今回は不問にするけど、次からは気を付けてね?」

「はい、わかりました。…ところで、それが分かったってことは… 誰か後をつけさせてました?」

 ライオンはしかめていた顔を緩めた。

「あー、うん、一応何かが起きたとき用にね。ほら、卯花くんって最初の時に吐いてたし、殺しはあれ以来だから…」

「流石にもう慣れちゃいましたよ、他のみんなが仕事してるのを見れば」

「まあ、そうだよね」


 空にはきれいな月が上がっていた。満月まで、あと数日だろうか。

「…いよいよ、ブルームーンが来ますね」

「うん。…僕らを狂わせた月が、ね」


 ブルームーン。彼らの獣の呪いライカンは、そこに隠されていた。

 卯花少年がこの呪いを受ける話は、今この時より三年ほど前の夏に遡る―

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