プロローグ Reaper 02
「ほら、来なよ。君が言うウサちゃんの本気ってやつ、見せてあげるよ」
「う、うわああぁぁぁ!!」
「ごめんなさい、ごめんなさいぃ!!」
二人の悪人は許しを請い始めた。
生きるためには、そうするしかなかった。
無論、その行動は意味がなかったが。
「いやー、残念だけどさ、許す許さないは僕で決められないんだよね。だって、依頼した人が決めることなんだもん」
「え…」
「つまり、僕は君たちを救うことはできない、ってことだよ。だから… さようなら」
そう言うと、兎人の姿はまた消えた。
「ど、どこだ! あの兎はどこ消えた!!」
「ひぃぃぃぃ!! やめろおおぉぉぉ!!」
悲鳴は路地裏に響く。しかし、この声は表通りまで聞こえなかったようだ。
次に兎人が現れた時には…
またひとり、今度は首を180°後ろに向いて床に崩れる。
「マサヒロおおおおおお!!」
「さーて、あとは… アツキくん、だっけ?」
「や…やめてくれよぉ… 俺は、俺はまだ… 死にたくねぇよぉ…!!」
「冥土の土産に教えてあげようか? 実は、僕たちっておととい会ってたんだよ?」
「馬鹿言えよ、お前みたいな化け物なんて見たことねぇよ!!」
「当たり前でしょ、ライカンの姿を人前に見せるわけないじゃん。僕が人の時に、さ」
「人の…時…?」
「おととい… 学校で散々殴ってくれたよねぇ…?」
ヤンキーは思い出そうとする。おととい殴った奴の顔を。
「あー、それとも殴った人間が多過ぎて覚えてないかな? 夕方、コンビニで殴ったの、覚えてないの?」
思い出した。コンビニだ。そこで一人殴った。最後の菓子を奪ったあいつを。
「ポテチ奪いやがって、だっけ? ただ僕の方が早かっただけなのにねぇ、ハハ」
「お前、あのときの…!」
「そんな性格してるから、こうやって人に恨みを買うんだよ?」
そういった瞬間に、兎人は三度姿を消した。
「どこだよ、どこ行ったんだよ…!」
「ここだよ」
声がした方… それは真上だった。
上を見れば、あの兎人が空を舞っていた。
服を着ながらも白い毛並みに覆われた兎は三日月に照らされていた。
それは、正直言ってとても美しい光景だった。
男が最期に見た景色は、空を舞う白兎の姿だった。
兎人は宙を蹴ると、急降下を始める。そのまま手を伸ばし、首を掴めば、
勢いのままに首を折った。
路地裏に、兎と三人の骸だけ残された。
兎は端末を取り出す。
「こちらラビット、任務完了したよー」
「了解。…しかし、少し派手にやり過ぎじゃない? 表に聞こえていたらどうすんの?」
「いやー、聞こえてないっしょ。…で、この人の亡骸はどうすりゃいいって?」
「その筋力と脚力があればここまで持ってこれるだろ?」
「はいよー。じゃ、戻るねー」
そして端末を切る。骸三つを抱えると、また空へと跳ね出した。
15回くらいだけ跳ねたあと、とある場所で立ち止まる。
人気のない路地裏の一角、と言っても現場の隣街だ。
目の前には「なんでも修繕屋 らひかん」と書いてある看板がある。
規定のリズムで7回ノック。すると、
「鳥はなんと鳴く?」
「呟きは丸聞こえだ」
合言葉を言うと、ロックが外れる。
中に入ると… 普通の修繕屋だった。そして、その中にいたのは…
「酷な仕事だったけど、お疲れ様」
「なになに、ターゲット相手に遊んだんだって?」
「酷な仕事、かぁ。もう慣れちゃったよ、正直。まあ、始めは抵抗があったけどね」
「ユウキは未来があるのに、こんな汚れ仕事をするようになって…」
「俺らはライカンだからな、こうでもしないと食っていけないさ」
蝶も狼も、兎と普通に接していた。
この修繕店は、もうひとつの顔がある。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます