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 広大な雨林は特密度の生命に覆われていた。膨大な種の虫や植物が社会を成す地表にはやはり大小無数の生き物が生態系を創る。足元には呻く溶岩土鉱石と微生物の世界。巨大な木々が手を伸ばした空には早くも翼を持った支配者たちの空域。特大一握りの土が王者の脚に踏み締められて雨の痕跡を滲ませる。あらゆる生き物が生きる為に存在する。故に美しい。

 古代の原生林に降り立って、二人は見晴らしの良い崖の上からその一角を見下ろしていた。


『いかがでしょうか、ミカエル様。この景色、空気、音、匂い、何か感じることはございませんか?』


 アンドロイドが問いかけたのは小さな子供だ。


「うーん……別に何も」


 子どもは少し考えて、やはり退屈そうな表情のまま答えた。


『さようでございますか……』


「歩きにくいし、うわっ、ムシが飛んできた、つぶしてセンセイ!」


『分かりました』


 アンドロイドは翡翠色の昆虫を両手で捕らえて払った。


「つぶれてないよ?」


『また飛んで来たら追い払いますので許してください』


「はーい…」


 虫に驚いて踏み込んだ地面と高機能靴に付いた泥を交互に見るミカエル。機嫌を損ねたのかもしれない。この辺りの硬い岩盤の上は土の層が薄い方だったが、ぬかるんだ地面以外にも衣服を汚す要素はいくつもあった。それが素晴らしいことなのに、とセンセイは口に出せない。


「ねえセンセイこの箱はもういいよ、次に行こう?」


『分かりました、外へ出ましょう』

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