基本ストーリーは、少年が成長しながらお姫様を助けに行く話。
ストーリーラインは非常に素直で単純だ。
しかし、そこに日本刀をはじめとした武器、そして武術というエッセンスがたっぷりと詰めこまれている。
さらに、漫画チックな個性的なキャラクターたちが暴れまわることも強い魅力を放っている。
だが、それはあくまで味付け。
やはり、ゾンビ!!
このゾンビの導入があまりに自然で驚く。
少年の一人称ながら淡々とした文章で、日常から非日常へと運ぶのだが、その運ばれた先の非日常がなぜか日常のような空気を漂わせている。
その独特の雰囲気が強い個性を放って、「怖い」というよりも「面白い」という印象を強く焼きつけてくる。
そしてスピーディー。
語り型の文章の特徴を活かした物語の進行は、次々と展開していき、飽きさせない構成が練られている。
見終わった時、まるでゾンビ映画を1本見たような満足感と快感がある。
素直に「おもしろかった」と思える作品だろう。
ごちそうさまでした!<(_ _)>
始めに断っておくが、私は作者・梧桐彰氏のいわゆる固定ファンである。
氏の作品はことごとく私にとって琴線に触れる傑作良作ばかり。未だかつてハズレと感じたことはない。
しかしながら、今作に関しては当初非常に困惑し、読むかどうかをかなりためらった。
なにしろ内容が「ゾンビを日本刀でぶった斬る話」である。
ゾンビといえば、半死人が徘徊し、生者を襲い、かくして世界は亡者の王国となったのでした――そんなB級映画のイメージしかない。
この作品は本当に大丈夫なのか? いくらなんでも、私の好みに合わないのでは?
そんな一抹の不安とともに読み始めた。最悪、口に合わなければそっとブラウザを閉じればいいのだと呟いて……。
不安は杞憂だった。
やはりこの作品、最高に面白い。
まずこの作品に登場するゾンビとは「自立歩行する災害」だ。
ある日突然、前触れもなく現れて、日常を破壊する、地震や台風といった災害の象徴なのだ。
この物語の基本骨子は、その災害の中でどのように生き延びるかにある。
気合いだとか根性だとかは通用しない。たった一つの判断違いが危機を招く。綱渡りのような恐怖がある。それを乗り越える術が一つ一つ登場する。恐怖が薄れ、希望が見えてくる。
言うなればこれは「対ゾンビ災害対策マニュアル」。これを読めば明日この世が死んだとしても、生き残る確率がぐっと上がるに違いない。
そしてサブストーリーとして、主人公の人間的成長と恋模様が描かれる。
死の権化が徘徊する中を、たった一人のために歩めるか?
それも、焦ることなく、冷静なままで。私なら30分で退場すると思う。
また一方で読者を楽しませてくれるのがアクションだ。
なにしろこの歩く災害、幸か不幸かぶっ殺せば死ぬのである。
主人公は剣道、またそこから昇華させた剣術を扱う。それ以外にも多種多様な武術を身に着けた人物が現れ、それぞれの特色を活かしながら死者に引導を渡す。
やっぱり梧桐作品はこうでなくっちゃ!
そんなわけで、ゾンビものという部分に不安を感じる必要はない。
敵を退け前に進む、進み続ける。これはそういう物語だ。
突如として崩壊した日常。
昨日まで何気なく過ごしていた街が、ゾンビが蔓延る悪夢のような世界に。
あまりにも呆気なく地獄へと変貌した世界で、少年は幼なじみを救いに行く。
主人公である邦彦は戸惑いつつも着実に知識を積み上げ、技を磨く。
死臭漂う街を生き抜こうと戦う人々との出会いもまた、彼に様々な変化を与える。やがて初めは少し頼りなかった邦彦の姿は、徐々に力強いものに。
出会い、別れ、託し、託され、獲得し、喪失する。
そんな巡りの中で邦彦は『死にかけ』を倒し、幼なじみのユミを救うためひたすらに進み続ける。
流麗な文章は、これらの過程を確かな説得力を持って読者に訴えかけてくる。
丁寧に作り込まれた深みのある作品です。
まずこの作品ですね、タイトルがいいですよ、うん。
シンプルだけど凄くカッコいい。
「なぜに北極星? しかもカネサダってなによ。銀牙伝説ウ〇ード?」って、気になって仕方なかったですもん。とてもキャッチーです。
タイトルの意味が分かった時は、「おお~」ってなりました。
そして内容。あらすじの通りゾンビ物ですよ。
ゾンビ物って、書くの凄く難しいと思うんです。
だって、ゾンビが出るって最初から分かってるから、よほど超常的な要素でもない限り、ストーリーのオチもなんとなく予想がついちゃうじゃないですか。
でもこの作品、おもしろかった。
普通の中学生だった邦彦が、ある日放り込まれた非日常の中で、剣の達人のじいちゃんを始めとする人々に様々な教えを伝授されて、ただの少年から剣士……いや、生きるための戦士になっていく。その過程の書き方が見事。
ラスト付近のカネサダを振るっての戦闘描写なんて、シンプルなのに手に汗握ってしまいましたもの。もう、手汗がねっちょり!
別に魔法が付与されているわけでもなく、卍解して千本桜になったりもしない、普通の日本刀。それを振るうのです。ひたすらに振るうのです。カッコいい!
戦いの動機が、「遠くにいる幼馴染の女の子を助けるため」っていうのも、単純ながら年相応の少年らしくて、凄くいい。
二人のメッセージのやり取りなんかも、短いながらそれだけに心にくるものがあって、思わずほろっとしてしまいました。
そして、次々出てくる登場人物たちのキャラがいいです。
特にサラ姉さんなんて、「あんた、ゾンビ物に出て来ちゃだめでしょ!」っていうくらいのハッチャケっぷりで、いい意味で悲壮感をフッ飛ばしてくれました。
あと、なんといってもじいちゃん。私の人生の師匠になってほしいくらい、素敵なおじい様です。
実戦的なゾンビの対処法や、サバイバル術の描写なんかも、丁寧でとてもタメになります。この作品を読めば、いつバイオハザードが起きても大丈夫!
とりあえずまずは、ホームセンターにいってスコップを買って来ましょう!
カネサダを持っていなくても、スコップがあればなんとかなるさ!!
洞爺湖の木刀もいいけど、万能なのはスコップだ!