「え。マジ食べるの?」では終わらない、後漢朝廷におけるグルメな怪異譚

後漢の和帝といえば、将軍・班超が西域守護ではイケイケで、
班固・班昭兄妹が皇室にいじめられつつ『漢書』を完成させ、
蔡倫による紙の再発明は後の漢字文化に大いに影響を与えた。
といったあたりを、教科書を引っ張り出してから思い出した。

その和帝の時代に実際に起こった(らしい)グルメな怪異譚。
外戚の陰網に下された「龍料理を振る舞え」との命令の裏に、
腹の底の見えない宦官・鄭衆の思惑が隠されているのだが──。
『述異記』……あったなあ、そんな本! 忘れてました。

根性の据わった女学者、神仙めいた旅の少女と、
2人の女傑の存在感が頼もしく、清々しくて魅力的。
中国古代の説話らしい雰囲気に引き込まれる快作で、
短編とは思えないほど、充実した読後感があった。