勇者は剣を手に入れるんじゃないよ。分捕るんだよ。

月給サーモン

第1話 勇者?嫌よ、面倒くさい臭いがする。


「ハァーイ!お元気かしら?」


そう話掛けて来たご友人である。ブロンドの髪を靡かせてやって来た、友人。香水でどぎつい臭いを嗅がせるわ、目が痛くなる位の明るい髪色で私の大事な目を刺すわetc...。だが、昔からの付き合いなので私の大事な女性友人でもある。


「うっわ。相変わらずどぎつい臭いね、貴女は。」


「うっわ、とは随分な第一声ね。シツレイな!」


「あら、それは失礼したわね。ぷすすー!」


「相っ変わらず、腹立つわね貴女って。」


どうやら今のぷすすー!と言うわざとらしい笑いで腹を立てたらしい。そんな所も変わらずで私は何だか安心して笑い声をあげた。


「…で?何故隣町のウィースにお住みの美女である貴女がこの水の都アルゼールに来たのかしら?」


「あらあら、美女だなんて!相変わらず貴女はたらしね!私がこの都に来た理由?それは、貴女に嫌な予感がしたからよ。何故なのかは解らないのだけれど…。」


ふぅ、と彼女は溜め息を吐いた。

昔から、この彼女には予知夢を視たり嫌な予感を察知するという特異性のある能力を持って生まれたらしい。

当の本人は、寧ろ他人にこの能力を押し付けてやりたいわよ!等と言っていた。いやぁ怖いね、女ってのは。


「…そう。それは、予知夢では無い方?」


「えぇ。予知夢では無いのは確かだわね。」


「…ふぅん。そうか、それをわざわざ知らせに来てくれたのかしら?」


「いいえ?それだけでは無いわ。実は、お願い事があって来たのよ。貴女にね。」


「…凄まじく、嫌だわ。丁重にお断りをすー」


ドッカァアンッ!!!


「あー…この束の間の平和をぶち壊してくれて、お礼をしなきゃならないねこりゃ。ねぇ、セシル?」


「フフッ!そうねぇ…私達の話を遮ったお馬鹿さんな男に、たぁっぷりとお礼をしなきゃいけないわね。」


この毒花の様な彼女達に勝る男は、この都には居らず。

最早諦めるしか道は無いのである。



「何だぁ?お前らは。」


主人公の自宅に不法侵入をした男は、目前に腕を組んで居る主人公の彼女とそのご友人の美女は男を汚れた物を見る眼で睨み付けていた。


「何だぁ?は此方の台詞だ、塵。ここは私の自宅なんだよ。塵が入ると、雑菌や黴菌だらけで汚らしいったらありゃあしないよ。即刻、出て行け。」


「…フッ!駄目よ、そんな言葉を吐いては。私がツボにハマっちゃうじゃないの…!フフフ…ッ!」


「もろツボにハマっているじゃないか、現在進行形で。」


「フハッ…やめてったら…ッ!」


「…テッメェら、俺を馬鹿にしてんのか!!」


パリィンッ!ドンッ!

数々の皿を割ってから、ドアを蹴り壊した男は主人公を斧で亡き者にしようと駆け出して斧を振り落とす瞬間、主人公はニホントウと言う武器で斧を持つ手ごと切り落とす。床には血で染みた斧や男の手が落ちる。


「グゥアアアアアァッ!!!?」


「…だから、貴様らは塵なのだよ。」


「ぐぅっ!?」




男は斬られ既に亡き者となった後、主人公は辺りを見渡す。

(こりゃあ、又引っ越しだわ。面倒くさい)


「…セシル、大丈夫?」


「吐き気がするわ…。」


「なら、外に行ってきなさい。此処は私が片付けるから」


「…嫌よ、貴女が一緒に来ないなら外へは行かないわ。」


「君は、変な所で頑固な女性だ。臭いを嗅ぎたくなければこれを使えば良い」


「フフ…ッ!酸素マスクって…!貴女は変わった女性だわ。」


「またツボったか君は。褒め言葉として、受け取っておくよ。」


「えぇ。」


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