第7話 主人公は、仲間を手に入れる。


……さて、この物語の女主人公であるエリーは大きな居酒屋(最早パブじゃねぇか)に居た。仲間(駒)を増やす為に。

パブもどきの大きな居酒屋の店内は、どこもかしこも男男男男男男で埋め尽くされている。酒のアルコールと煙草の臭いで充満しているので鼻にツンと来る刺激を鼻がよく利くエリーは随分と不機嫌な表情である。その為、店内の客からは(「あ、あ、は、ははは般若が来た…!!どうしよう…!俺地面に埋まった方が良いよな…!?」「ししし知るかよ!?っつーかそれを俺に聞くなよ!!……よし、マンホールを開けよう」「お前は阿呆!?マンホール!?何でマンホールが出て来たのかな…!?ん!?阿呆なの?阿呆なの?」「…奴に逆らうなよ。逆らった奴は水責めで最期には川に落として溺死させたらしいぜ…恐ろしい女だ…!」「ひ、ひいいいぃぃぃ!!俺は此処で死ぬんだろうか…!?」とコソっと囁かれているとか何とか。


「あらぁ!やっと来てくれたのぉ!?」


ずっと待っていたと言わんばかりの表情で明るい声色を発した目前に居るバニーさんは女性なのだが、かなり引かれる程可笑しな人間である。現にエリーは口角をひくひくと動かしている。


「やぁ、変人バニー。今日のご機嫌は如何かな?」


「やだぁ変人だなんてぇ!ご機嫌は、もっちろん良いわよぉ!貴女がやっと来てくれたんだからぁ!」


「…さいですか。…あ、変人ちゃん。一つ頼みたいんだが。」


「あら?何かしら?…あ、もしかして仲間が必要かしら?」


「察しが良くて、助かるよ。仲間を集めたいから、パブもどきのこの店に居る冒険者達を…根こそぎ、寄越せ。」


人の良い笑顔を浮かべたエリーは、まるで極悪人かヤの付く職業の人間が浮かべるニヤリと笑った顔。その表情を見た周りはドン引きする程である。


「…エリー、その顔は極悪人のお顔だわ。」


「失礼な事を言うね、君は。」


「…じ、じゃあ今呼ぶわね!サラリーマンさぁん!お呼びよぉ!」


そう呼ばれた人物は、間もなくエリーとセシルの前に現れたのは30代位の男性であった。見た目は、硬派で誠実そうな男性でお顔は整っており、如何にも女にモテるだろうなと言うお顔。


(え?サラリーマン?汗水垂らして一生懸命に働くあのお父さん方をサラリーマンと呼ぶよね?え?何?そんな変な名前を付けられたのか君は?ご苦労様です。)


「…あ、私はエリーと申します。これから宜しくお願い致します。」


「あぁ、これはご丁寧な紹介を有難う御座います。私は、サラリーマンと申します。宜しくお願い致します。(凄く不満な名前なのだが、君変えてくれないか?)」


「ちょっと、サラリーマンさん…でしたっけ?私のエリーに触らないでくださらない?」


「…待て、私はいつ君の物になったんだい?…失礼。此方の女性は私の友人であるセシルです。」


「セシルさんですか。その…エリーさんとは、握手をしただけなのだが…?(何だこの如何にも視覚や嗅覚にドギツイ美女は)」


「ハンッ!…どうかしら、ねぇエリー?」


「いや君はどういう思考回路をしているのか、頭蓋骨を割って視てみたいよ。バニーちゃん、後の人間はまだかい?」


「え、あ、そうね!カーニバルさぁん!お呼びよぉ!」


(又突っ込みがいのある名前かい!しかも何?カーニバルって、あれだよね?皆が踊り出す祭りだよね?確かりおと言う国が有名だったよね?あれ?違ったっけ?)


「…よ、呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!…です。カーニバルと言います、宜しくお願いします…。」


思いっきり滑ったなおい。カーニバルは女性である。顔を真っ赤にして今にも爆発しそう。凄く可愛い、いじめたくなるタイプだわこの子。吹き出しそうだが、堪えなきゃ可哀想だ。


「…初めまして、エリーと申します。宜しくお願いします、カーニバルさん改め…エリスさん。」


「え、お名前…!あ、有難う御座います!変な名前から可愛らしいお名前に変えてくださって、本当に有難う御座います…!」


握手をした途端にぶんぶんと効果音が付く位に激しく上下に手を動かしたエリスは、凄く嬉しそうな笑顔にエリーはほっと安心をした。が、セシルは凄く怖い顔でエリスを睨んでいた。サラリーマンは、手に負えないから助けてくれと眼でエリーに訴え始めていた。


「…なんですって!?私が付けた名前が変…!?」


「やっぱり変人ちゃんが付けた名前か。面白いけれど、痛いよ。」


その言葉に変人バニーちゃん改め…コラックスは、大層なショックだった様で膝から崩れ落ちて、床に腕を叩き付けたら「んノオオォォオ!!!」と野太い悲鳴を発した。


「…後は、剣士だな。コラックス、剣士は居るか?」


「…剣士では無く戦えるのは居るけれど…その、人間ではなく生物なのよ。」


「…生物?種族は?」




「マンティコアよ。」




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