第5話 私の使命なのだよ。


「ウォッホン!…ジェイドよ、下がれ。」


「はっ!」


昔馴染みであるジェイドは、お偉いさんの命令に従ってそのお偉いさんの背後に立った。


「さて…お主は、あのお馬鹿な両親をその手で戒めるのが願いか?」


「…何故、貴男が知っておられるのでしょうか?」


「お主の婆さんからよく聴かされていたからの。フォッホッホッ!」


お偉いさんの爺さんの眼は、何もかもを見透かす様な眼だ。私は、あまり好きでは無い。それと同時に、食えない性格をしている様。


「…婆さんって、私の祖母から聴かされていたとは、どういう事でしょうか?」


私はニホントウを掴んで、鞘から刀身を覗かせた。


「なぁに、そう警戒するでない。少なくとも、儂は君の味方じゃ。」


爺さんは、私の武器であるニホントウを掴んで鞘に戻そうとしたが…何かを思い出した様に鞘から刀身を出しては、刀の状態を見ている。いや、返して?我の武器ぞ?それは我の武器ぞ?


「…随分、血を吸って満足する刀じゃな。」


「…は、血を吸って満足する刀?」


「うむ。儂は昔から刀を診て育ってきたからの。大体は解るんじゃよ。」


「は、はぁ…?」


「それに…お主は随分と刀と共にあってきたのじゃな。診れば解る。」


「…まぁ、そうですね。いつの頃だったか忘れましたが…一目見て、一振りをすると…私の感覚に合っていたので買いました。」


「ほう?成る程のぅ。…この刀、手入れ等せずとも綺麗になる妖刀じゃなぁ。懐かしい。儂もこの刀を買おうと一振りしたら駄目じゃった。この刀は儂を拒んだんじゃよ。ふぁっふぁっふぁっ!」


「…妖刀、か。」


私は刀を見遣ると、一見普通の刀に見えるが…何処となく妖しい雰囲気が漂う刀。店主から言わせると、『普通では無いからなのかは知らんが。手入れ等せずとも綺麗な刀、何故手入れ等せずとも綺麗な刀なのか…俺が考えて出た一説だが、それは血を吸うからだ。逆に血を吸わなければ駄目になる刀だ。それのせいか…誰も手に持つ事、触れる事もしなかった。お前さんが来る迄はな。そいつぁ妖刀と言われている刀で、名は【鬼斬】。字からして解るが、鬼を斬る刀と呼ばれている。扱いがかなり難しいが…お前さんなら、大丈夫だろう。』と言って、その店主は残念ながらもう…この世には居ない。本当かどうかは知らんが、魔の族に殺害されたと私は聴いた。


「お主は…両親が憎いか?」


「いえ、全く。」


「…じゃあ、何故なのかな?」



「それが、私の使命であるから。只それだけです。」


セシルは、え?貴女は何を言っているの?は?え?復讐の様なものじゃなかったっけ?あれ?と言う言葉を顔に書いてある。

ジェイドは、何故か笑いを押し殺していた。



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