第4話 …デメリットだらけだろうが。

「あ、それと…私、勇者になろうかと思う。」


この言葉を口に出した後、私達は眠っていたらしい。

彼女のセシルは、朝食を作り終えたらしく早く食べてちょうだいと言って1階に降りていった。あ、言い忘れていたが…この家は木造の二階建てだ。直ぐに壊されるであろうと予想して造ったが、安易な造りはしない性質なので、ちゃんと頑丈な木材で造り外観内観にも拘って装飾をつけた。安全性に拘ってこの家を造り上げた私を、誰か褒め称えるが良いぞ?我、勇者ぞ?


「あら、エリー。降りてきたのね、お早う。」


「…ん。」


「寝足りない、とか言うんじゃあないわよね?」


「その通りだ。何か文句あるのかい?」


「文句あるに決まっているでしょうが!?今日は、デビュー…いえ、貴女が勇者になる日なのよ!寝坊して遅刻…なんて許されるとお思い!?」


「…あーはいはい。朝からキャンキャン吠えるんじゃあないよ、キャンティー。」


「キャンキャン吠えていないわよ!て言うか、キャンティーって誰よ!?新人の泥棒雌!?」


「何でそうなるんだ?キャンティーって、ほらあそこの犬だ。」


「は…?犬!?何処に居るのよ!?」


「は?居るじゃあないか…あそこに。君には見えないのか…?」


「…貴女、まだ寝ぼけているのかしら。」


私が窓の外に居る犬を指し示したが、セシルには視えていないらしい。どういう事か、全くもって理解ができない。

セシル曰わく、只の草原が風に揺れているだけに見える。

らしい。私はこの眼でちゃんと犬が視えているのだが…一体、どうなっている?


「貴女は…霊が視えているのかもしれないわね。」


「…何の冗談を言う様になったんだい、君は。」


「冗談じゃあなーいわよぉう!…真面目な話よ。今迄は、あったのかしら?」


「…UMAを視た事かい?」


「…UMAじゃないわよ。幽霊よ、幽霊!」


「…悪いが、何らかの機械で判明しなければ信じないと言う性質でね。幽霊だか超能力だか知らんが、仕掛けがあると私は思うわ。」


「又出たわね…唯物論的思考。」


「唯物論、ねぇ…。まぁ良い。兎に角にも、視えてたまるモンかい!誰かに投げ捨ててやりたいよ。」


「それを言うなら、私もよ。」


「同類じゃあないか。」


「同類ね、ふふっ」


「クッハハハ」


「「ふふふっ…ハーッハッハッハッ!!」」


何だこのシンクロは。



ーー


朝食を食べ終えて皿を洗っていた時に呼び鈴が鳴った。

誰であろうと敵だと認識し、タオルで手を拭いてからニホントウを手に持ち、玄関のドアを開けた瞬間に敵の首に武器の先端部分…鋭利な刀身を押し当てる。その人物は、お偉い身分の人間だとは知らずに私は殺そうとしたが…その人間の付き人に背負い投げをされたが、受け身を取る。付き人を殺害しようと、脚に力を溜めて思い切り地面を蹴って付き人の首をニホントウの柄で力一杯突く。その人間は敵だと改めて認識し、首を掻っ斬ろうとニホントウの鋭利な先端で刺そうとした。が、横から蹴りを食らわれた為その殺害行為は中断せざるを得なかった。横から一発の蹴りを入れられた為、その人間も敵であると認識した。


私に痛みを与えたのは、オ前カ。ならば相応の死を与えよう。そう思った時に私は、その人間に力一杯の蹴りを食らわせてから、もう一発の蹴りを隙だらけな背後から食らわせた。


私ニ痛ミヲ与エタ。二匹纏メテ殺サナケレバ。ヨクモ、私ニ傷ヲ負ワセタ。コイツラニ死ヲ。


「 コ ロ ス 」


そう決めた私は、地面を脚で蹴りニホントウの鋭利な先端で一匹目は腹を刺してから腹の中を抉り、斬り捨てる。

二匹目を見ると、昔馴染みの男であった。が、今の私には害しか無い。今は、殺害の標的である。


私ニ傷ヲ負ワセタ者ニハ天誅ヲ。


「っ…エリー!待って!やめてちょうだい!」


何ダコイツハ。コイツモ、殺サナケレバ。


「待て、エリー!その者は、お前の友人であろう!」


敵である昔馴染みの男が言ったその言葉に、私はハッと我に返る。私はセシルを彼女を…またもや殺そうとしたのか?


「お願いだから…これ以上はやめてちょうだい。貴女が苦しむのは見たくないわよ…!」


「……すまん、セシル。」


「…いつものエリーね。良かった、戻ってきてくれて…」


彼女の美しいお顔が凄く近いので、何だ?と怪しんだ瞬間に私の口に何やら柔らかい物が当たった。


「…なぁ、セシル?今、君は私に何をしたんだ。」


「何って…接吻よ?」


「…あー、ご挨拶よね?」


「…あ?挨拶だぁ?」


私がそう聴いた途端に、般若のお面のお顔になったセシル。凄く低声なんだが、何だろう寒気がする。今のは、挨拶じゃない?え?親愛の証?それとも何なの?


「鈍チンさんには、教えてあげないわ。」


「…フハハッ!フラれたな!久しいな、エリー。」


「…貴様か、ジェイド。」


「あぁ、その冷たさも健在だな。」


「いや、全くもって普通だが。」


「その真顔をやめろ。」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る