最終話 有我祷
ㅤめちゃくちゃ眠い。めちゃくちゃ恋がしたい。めちゃくちゃお腹空いた。
ㅤオレはどうやら、元の世界に帰ってきたらしい。意識が
ㅤ目覚めた朝は、自然の光に包まれて。やがてぼんやりと、こっちの世界での出来事を思い出す。勝手に涙がこぼれだす。
「お母さん……」
ㅤオレ、ひとりぼっちだ。でも、本当にひとりかっていうと、きっと違う。ちょっと、思い出したんだ。幼いときの記憶。
ㅤ足の裏と、足の裏を合わせても、くっつかないところがあること。それを土踏まずと呼ぶこと。
ㅤ繋げてみても、離れている。離れているけど、繋がっている。
ㅤそうして触れた感触を、忘れることはきっとない。
ㅤオレ、何とかするよ。何とか、ね。こっちだってわからないことだらけの世界で、理解不能でも、きっと楽しんでやるんだ。だけどいつしか、今の気持ちを忘れるようだったら、迷わずまた、会いに行く。
ㅤそこに、いるんでしょ?
ㅤ布団の上で、あぐらをかいて。寝転がって、足の裏と裏を合わせる。綺麗な楕円を描いたら、そこに手のひらを突っ込んでやるんだ。そしたら、飛べる。
「今日はバイトがありませんわ」
「チケットもぎりも、たまには休みます」
「許さんぞ、絶対に許さんぞぉ」
「ベレー帽、似合ってますか」
「元気に来ました、シカバネです」
「魔法使いは、魔法を使うものだ!」
「おれたち天狗と河童だぜ?」
「わがはいは、魔王」
ㅤみんな。
「ヅッチーノ!」
ㅤへへ。久しぶり。でもないか。
「みんなありがとう。オレの名前、ありがとう」
ㅤ土を踏みしめ、花は立つ。
ふしぎの世界のヅッチーノ 浅倉 茉白 @asakura_mashiro
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