モリに閉ざされた狂気は、とても悲しい物語だった

その山奥の村には、入ってはならないモリがある。
モリの中には、廃墟となった屋敷が建っている。

禁じられれば、子どもたちはむしろ探検などをしたがるから、
風変わりな夏祭の日、弟も村の子に誘われて屋敷に入ったのだ。
弟が屋敷でいなくなったと聞き、楓は1人、捜索に乗り出した。
日頃は女子高生らしく振る舞う楓だが、本当は、度胸は人一倍。

埃だらけの屋敷を歩き回るうち、学生服の少年、千歳に出会う。
千歳も彼の弟を探していると言い、楓は彼と同行することに。
怖がりな千歳は人柄がよく、勝ち気な楓も次第に打ち解けるが、
千歳は村と屋敷の謎に妙に詳しい上、様子が変わり始め──。

静かな筆致で描かれる、夏の夜の出来事。
その村は、何を隠しているのか。
その祭は、なぜ不気味なのか。
ひっそりとした悲しみが後を引くホラー。