料理人が主のため選んだ最後の選択は――

峯なる国で食堂を営んでいた朱宵鈴はその腕を買われ、先代の帝たる暁王の料理人に取り立てられた。
狂人であるがゆえに禅譲を迫られたという暁王は、現帝に毒を盛られた結果、子どもさながらの無垢と化していたのだ。
朱宵鈴は料理を出し続け、暁王との平穏な日々を過ごすのだが――
叛乱の勃発により、その旗印とされかねない暁王の毒殺を命じられる。

テーマがタイトルそのままという、非常によくできた構成に目を惹きつけられました。
そして、主人公と暁王の会合シーンはすべて食卓という潔さを始め、1万字弱の短編にここまでの「色濃さ」を演出してのけた筆力にもです。

主人公の心情が細やかで濃やかなんですよね。だからこそ、彼女の最後の選択に説得力がありますし、叙情がある。
主人公にきちんとピンスポを当ててひとつのテーマを書き切れる人は希少なので、その点にぜひ注目してお読みいただきたいところです。迷わずオススメさせていただきますよー。

(目を持って行かれた“テーマ”4選/文=髙橋 剛)

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