おいしい料理を作りたくて、土壌の生成から始めたような、そんな膨大なオリジナルの塊。
異世界には異世界が紡いだ歴史があって当たり前のはずだが、それを1から設定するには多大な労力が必要だ。
故に、「そこまでできるファンタジー作家」は一握りで、成し遂げた作家の作品はどれも一級品だ。
なにより、異世界そのものや異世界に向かう動機や背景が完璧で、不自然な事に対する不自然さにまったく違和感がない。
それでいて簡潔でわかりやすく、主人公にがっちり視線を奪われたまま僕らを物語に連れて行ってくれる。
完璧な導入部、まずこれが素晴らしい。
これからこの作品を読み始める方、
あなたはまったく知らない神話を知る事になるでしょう
あなたが想像もしていなかった冒険を目にする事になるでしょう
本作で体験する、極上の未知やスリルが羨ましい
きっとびっくりして、混乱して、ゾクゾクすると思います
「絶対に埋もれさせてはいけない名作」
こういった言葉がしっくりくる作品です
どうぞ、未知の扉を開いてください
どうぞ、未知への扉を開いてください
そしてたくさんの人々に知って欲しい
この作品の事を
この作者が紡ぐ物語の結末を
完徹で仕事に行く覚悟はありますか?
あるいは、超絶旨い舌のとろける絶品スウィーツが目の前にあって「どうぞ」と勧められても、「いいえ、お腹いっぱいなんで」と断れるスウィーツ好きくらいの鉄の意志ありますか?そんな鉄意志の小説好きですか?
これは、この物語は信頼できる物語です。
至高の物語の一つです。
どんな結末を迎えようとも、きっと楽しませ、面白がらせ、感情を波立たせるでしょう。
これまで読んできて、悪い意味で裏切られたことなど一度もない。
だからこそ、覚悟があるやつしか読んじゃダメ。
ゼッタイに徹夜で読んでしまう。続きが気になって気になって仕方がないから。仕事中にスマホを開いて、仕事関連の本のフリして読んじゃうよ。
だめだ。
仕事中は仕事しなくっちゃ。どっかの警察署だったら、犯人逃走しちゃうから。エロ本じゃない分、多少救われるかも知んないけど。
昨今の俺TUEEE系やチーレム系とは一線を画する伏線に濃密な話の展開。
それと苛烈に生きる主人公にすごく惹かれました。
特に主人公が重要な戦いに赴くその姿は殉教者のようであり、死を厭わぬ狂者のようでもありました。
4部終了時点まで読了しましたが、3部後編は特に身震いがするほど面白かったです。
その上で日常パートはどこか抜けた姿を見せてくれていて、どことなく人間臭く、ただ戦うばかりではない主人公を魅せてくれていて、続きが非常に気になる仕上がりになってます。
主人公に好意を持つ女性たちもそれぞれ魅力的で、作品によっては出てきた瞬間なんの脈絡もなく惚れてるヒロインさえ多い中、この手のタイプのハーレムは珍しいのではないでしょうか?
また、世界も基本的にご都合主義のようなものではなく、きちんと練り込まれています。
『神の御業は皮肉に満ちている』という一文は、正にこの世界を現している言葉だと思う程です。
人との出会いや別れもしっかりと描写されていて、後味の悪い別れ方さえしっかりと糧にして前に進む彼らの姿を、私自身はまるでその世界を覗いているような気分になりました。
この作品、おおざっぱに言うとファンタジーとSFの融合、というジャンルになるのかもしれませんが、ボーイミーツ的なラブコメ要素アリ、日常編のグルメもの的な要素アリ、勿論本編のダンジョン攻略や世界の謎に迫る冒険と、その過程における迫力満点の戦闘アリと、とにかく各種要素がこれでもかとばかりに詰め込まれています。そして、それら多くの要素が全体的にメチャクチャ完成度高いんですよ。会話にはキャラクターの「生きた感情」が込められてますし、地の文章も日本語としてハイレベル…、その上で両方のバランスがまた絶妙にイイんですよね。
「これスゲーな」というのが素直な感想でした。
大長編故に(私は一気に読んじゃいましたがw)登場人物が多いですし、所属勢力や世界内の神々等、固有名詞もかなり多いとは思います。途中、少々読み解くのに難解かなと思わせる部分も無いと言ったら噓になるでしょう。覚えられない、わかんない、がツマンナイにつながってしまうかもしれません。そういう意味では、読み手を選ぶタイプの作品なのかなとも思います。
が、しかし、それを十分に考慮に入れて、マイナス面として差し引いたとしても、それでもやっぱり「これスゲーな」が、この作品に対する私の最終的な感想になりますね。『三国志演義』や『氷と炎の歌』シリーズ(ゲーム・オブ・スローンズ)なんかも登場人物多いですし、勢力図も結構な勢いで入り乱れますが、それでツマラナイかというとそんなことは無いでしょう。合う、合わないは別として、面白いモノは面白いんですよ。私の中では翻訳して世界に誇りたいレベル!!!
作者である麻美ヒナギ様には感謝の気持ちでいっぱいです。素晴らしい物語に酔わせていただき、本当にありがとうございました。お体に気を付けて、今後も活躍して下さることを心から願い、祈るばかりです。長年の連載、お疲れ様でした。