青春×怪談


死んだおばあちゃんから電話がくる


「どこにいるの?」とか

「心配している、さみしい」とか

「つらいのなら、こっちにおいで」とか


天国にいるのか、地獄にいるのか

もっと、べつのよくわからないところからなのか

とにかく、人が弱ってるのを知ってか知らずか鬼電おにでんしてくる


生きてる時は、そんなことしなかったのに


あまりにもうるさいから

しばらく、無視することにした



その時はいろいろあって、かなり死にたくなってたから

なんとなく衝動しょうどう的に冬の海にやってきたものの

わたしの今の気分にあう死に場所が見つからなかった



テトラポットを足場にざぶんと海に飛び込んで

しばらく経てばこの寒さだから死ぬこともできるだろうけど


冬の海の水は冷たくて苦しくて

「死にたい」から「生きたい」になって

最終的に「助かりたい」になって


生きようとして必死に藻掻もがくんだけど

鼻とか口とかに容赦ようしゃなく冷たい海水が入ってきて

肺も海水で満たされちゃって

どうしてもい上がれずに、死ぬ瞬間まで

飛び込んだことを後悔しながら死にそうで嫌になった


寒いのはNG

どうせ死ぬなら、寒くない方がいい

あと、苦しいのも嫌だな



死にたいと思っていたけど、その程度のもの

深刻にガチで死にたい人からすると「にわか」なのだ

ファッション死にたい、なのだ



おばあちゃんの形見の携帯電話ガラケーがぶるぶると震える


お父さんとお母さんの代わりに

わたしを育ててくれた大好きなおばあちゃん


生きるのがつらくても

わたしは生きることにしたよ、おばあちゃん

ごめんね


海に向かって不法投棄した


気持ちは弓なりに遠くへ投げたつもりだったけど

予定より、ずっと近いところにぽちゃんと落ちて見えなくなった

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怖いってなんだろう? ホラー風味 短編集 あきはる @03114

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