写真


終わったら焼き肉を食べにいくからと

ぐずる息子をなだめて、写真スタジオに連れ込む


もう、私とは無関係だとしても

彼にとっては向こうの両親も祖父母になる

それを奪ってしまうのは自分勝手に思えた


七五三の節目に写真を撮って贈るのも必要と考えたのだが

もともと、こういうものにうといから困ってしまう


どういう衣装でどんな写真にすれば良いかわからない

女性スタッフに頼んで、それらしく写真を撮ってくれと頼む


息子は緊張した面持おももちで衣装を着せられ

髪をセットされ、なされるがままになっている


息子はあまり自分になついていない、そう感じる

妻や母に任せきりだったから、それも仕方がない


きっと、さびしい思いをさせているのだろう

すまないとは思うがすべてに手は行き届かない



疲れが出て椅子の上でうたた寝をしてしまった

かたわらでは息子も寝ている


起こしてくれれば良いのに、店員に声をかけると

起こさないようにって言われましたから、にこやかに返される


写真の仕上がりを見せてもらう

死んだはずの妻の胸に息子が顔をうずめている一枚もあった


この女性はどうしたのかを訊くと

先に帰られましたよ、と

そして、言付ことづけを預かっているという



あっちで待ってます

お世話が終わったら来てください

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