夏、魔法と哀愁の季節。

僕は某サイトでこれを読んだ時から、ずっとこの物語の虜でした。

僕は夏が大嫌いです。良い思い出なんてまるでない。
友達と遊びに出かけたような青春や、とろけるような大恋愛、穏やかな家族のひととき。
そういったヒューマンドラマの定番である「夏の美しさ」を知らないから、嫌いです。
あと虫が嫌いなんです。汗かくのもヤだし。

にも関わらず、夏のもつ哀愁には強く心惹かれます。それは現実で体験できなかったものを大人になって体験させてくれるからか、それともあの頃手に入れられなかった青春が欲しくて、辛くて、だからこそ手を伸ばしてしまうのか。

兎にも角にも、夏という季節には不思議な魔力があります。

本作の構造は至ってシンプルで、軽妙な会話の応酬と、合間に挿入される素敵な情景描写。
前半部分はありふれたヒューマンコメディが繰り広げられ、後半では悲しくもどかしい悲劇が待っている。

何より素晴らしいのは、二人の抱える(もしくは抱えていた)悩みや苦しみはあくまで等身大の重みであり、特殊な理由は何一つない。
だからでしょうか、とても人間的で、生き生きとしていて、瑞々しい人物像が見えてくる。

変に設定もりもりにしちゃうと、「どう?悲しいでしょ?」って嘘っぽさが鼻につくだろうし、主人公の抱える秘密の悲しさが薄れてしまう。

呆気なさ。それがこの物語最大の仕掛けであり、読み手に現実感を植え付ける最高の調味料となっております。

とまあ、ここまでそれっぽいレビューを書いてみたわけですが、もう我慢できません。欲望のリミッターを解除します。

うわああああああ!!お姉さん可愛いなあちくしょおおおおお!!
こんなお姉さんと毎晩お話ししたいよお!!!!
素敵!! 素敵で儚くて悲しくて、でもとっても綺麗な関係性!!

しかも以前読んだ時より加筆されている……素晴らしい作家スピリットだ……このひたむきさをMifaとかいうポンコツも見習ってほしいもんだ……。

というわけで、多分一年ぶりくらいに読んだんですが、やはり素晴らしい。
夏という季節のもつ神秘性、ふと唐突に去来する「寂しさ」がうまく表現されています。
この物語好き。青葉さんの作品の中では、今のところ一番好き。

こんな物語、書けたらなああああ羨ましいなあああああ

はい、取り乱してしまいました。失礼致しました。
もうすぐ春ですが、今年こそこんな甘酸っぱい恋がしてみたいものです。

夏の終わり、何かが終わって何かが弾ける。
向日葵は枯れても、その種はまた芽吹き、何度でも甦る。
人間もまた、そうあってほしい。
これは空想でしょうか。それとも願望でしょうか。
僕はまだ流星を見つけられていないから、その答えが分かりません。