だからきっと、文字の中でなら生きてゆける。

本作品は、以前開催された自主企画よりピックアップされた「本当に面白い作品」の論評まとめです。

160以上の作品から選ばれたものなので、当然レベルが高いです。いくつか読ませて頂いたのですが、なるほど面白い!

ところでふと思ったんですが、文字だけのコミュニケーションって本当に難しいですよね。いっそ面倒くさいくらいに。
声に出すのと文字化するのとでは印象の変わる言い回しがあるし、形として残り続けるものでもある。

何でそんな難しいやり取りがソーシャルネットワークの主流で、更には小説という大きな文化を築き上げたのでしょう。
……って言うといかにも次の行で答えを提示してくれると思うでしょう?

知らん!!!! 僕が知るわけないだろ!

ただ、もしかしたら不自由で面倒だからこそ好かれるのかもしれない。言葉一つひとつに想いを込めて、出来得る最高の表現で伝えることが出来るから。喋りながらだと余計に難しいですもんね。

僕らは時に悲しみの中で、怒りの中で、ある言葉を待ち続ける。
それは「大丈夫だよ」かもしれないし、「ありがとう」かもしれない。
しかしこの世界は中々残酷で、そういう時に限って孤独を与えられてしまう。

そこから逃れる一つの手段として、「孤独を演出するもの」を手に入れる、というのがあります。
孤独だから、孤独で無ければ成し得ないものを見つける事です。

それは映画でもいい。ゲームでもいい。散歩でも楽器でもスポーツでもいい。
中でも小説というのは最も強力で最も続けられるものだと僕は信じています。
膨大な数の物語が存在していて、尽きることがない。文字という極限まで制限され生み出された世界の中で、物語と私とが二人っきり。

とまぁ、とあるSF小説にある言葉を少し借りて長々書きましたが、ここにある物語もまた、貴方の孤独を癒やし、貴方に新たな世界をもたらしてくれる。

そんな劇薬を一つずつ飲んでいこう。そういう夜があっていい。やがてそこへ没入してゆくのだから。

だからきっと、文字の中でなら生きていられる。
倒錯的な歓びを、共に味わいましょう。

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