百合は雨に似て美しい。

はあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜尊い……。
働くお姉さんって素晴らしいです。カッコイイです。美しいです。国宝級です。

もちろん働く男もカッコイイですけど、いやごめん嘘ついた正直興味ない。働くお姉さんってアネモネみたいな美しさがあるんですよね。

物語自体は平坦であり、何か波乱があるわけでもなく、本当に細やかな日常を切り取ったものです。
しかしそれが良い。ゴチャゴチャと着飾った、悪い言い方をすれば「狙った」百合が数多く存在する中、本作はほんの小さな温かさのみにとどめている。

でも普通そうだと思うんですよ。百合に限らず。
公衆の面前でベッタベッタするような事も、それらしい決め台詞でキュンとするような事も早々ない。

勿論これらはフィクションなのだから、ドラマティックな演出があったって構わないと思う。
しかし全部が全部そうであってはつまらない。

ある小説家の方が仰っていましたが、
「萌えというものは狙ってはいけない。そちらを見ず、振り向きもせず、ただ背後の水面に浮かぶ月を切り裂くが如く掬い上げなければならない」と。

百合も同様だという内容でしたが、本当にそのとおりだと思います。
恋は繊細でありながらしなやかさも持つ、非常に定義の難しい概念です。
そこへ更に百合というある種特殊なシチュエーションが追加されるのですから、ただ女の子同士イチャイチャさせときゃ良いだろ、等と安易な考えでぶち込んでくる輩にはギガンティックテイガードライバーをお見舞いしてやりたい。

さて、話が逸れましたが本作においては「梅雨が来れば二人でくっついて歩けるんだ」という、可愛らしくいじらしい喜びを持って幕を閉じます。

等身大の嬉しさ、だからこそ読み手もそれを想像しやすいし短いボリュームの物語であっても書いてあること以上の情景を連想しやすい。

そういう想像力の余地を上手いこと残してくれてあるので、妄想が捗るってもんです。
なお冒頭で気安くナンパしてくる百合破壊クソパリピには後ほど切腹を命じます。

というわけで、ご馳走さまでした。
良い百合でした。もっと百合を読みたい。百合を読ませろ(豹変)