良質で、売れそうで、そして大好きなストーリーです

家政をオーガナイズする女性のお仕事ストーリー。主人公はいわゆるゴミ屋敷問題の解決屋さんです。日本ではこうした業務は精神保健福祉士などが従事するのですが、単なるワーカーではなく、依頼者の人生の立て直しを図る仕事でもあります。身内が近い仕事してるので、どんなもんかなと思って読んでみました。

主人公が偏屈に見える依頼人と仕事を通じて徐々に打ち解けて行くわけですが、とにかくまずは雑学的な要素が面白くてたまらないです。職業の特色ももちろん、舞台がイギリスなんですが、へーこんな習慣があるんだ、というのもあれば、あーどこの国も一緒だなあ、とも。

加えて主役のマキカさんと依頼人ミルドレッドの口には出さないが顔と仕草にハッキリでているメリハリの効いた心理バトル。年齢相応の心情描写もあればコメディのような掛け合いもあり、笑いと涙がふんだんに盛り込まれてます。そして屋敷にうず高く積もったゴミの山はイギリス史の一部を切り取ったような様々な依頼人の背景に関わっており、前述の英国描写にもう一段深みを与えています。

ミルドレッドのゴミ屋敷が出来上がった理由が徐々にわかっていくクレッシェンドにもワクワクしました。一人一人にドラマがある、細部にまで行き届いた構成力も魅力的です。

とにかく文句なしです。大好きな作品です。多少の直しは入るかもしれませんが、商業でも通用しそうに思います。作者が時折悪ノリして出してしまう地の文に組み込まれたユーモアも絶妙。様々な角度から楽しめる傑作でした。

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