一言で以て伝えた通り、韻律の美しさに惚れ惚れとしたよ。かつて日本の音は美しかった。だが今はどうだ、なかなかそこまで気の回る物書きが……ねぇ。だからこそ酔い痴れて楽しく読み進めたはいいものの、あれだね、半ばの記号はちょいと無粋に感じたね。それでも良いよ。良いもんは良い。尤もこんなご時世だから――人を選ぶかも知れんがね。
朝から(読んだ時間故に)酒が飲みたくなってきた。タグに『恋の話』とあるが『美味しい話』もしっくり来る。どちらにせよ、読み手をどこかその気にさせてくれる噺ときたもんだ。
小粋で洒落た昔言葉で物語を紡ぐ力。この作者様の力量、伊達じゃありません。美味しい話か、と思いきや、恋の話なんですね。酒の肴から恋につなげるくだりが流麗です。風情漂う江戸の恋。ぜひご堪能下さい!オススメです!
現代とは明らかに違う時代の口語表現に挑戦するのって難しいですよね。調べるだけでは書けない。やはり下地(それまでの読書量とか)が必要になる。「宵待草は竹久夢二だしさ……」というエクスキューズはあるものの、舞台となっている時代を感じさせる会話と描写をかなり手堅く成立させているところにGood!を。見習いたいとは思うものの、一朝一夕には難しいだろうなあ。気になるところがあったのでそちらは近況ノートで後ほど。
なんと心地よい刺激か。私がこれまで触れてこなかったジャンルだから感じるのだろうか。登場人物に愛嬌があるわ、洒落言葉が楽しいわ、腹は減るわ、面白いわでとんでもねえ。嗚呼、おそろしい、何度も読み返してしまうじゃあないの。蠱惑的でとんでもねえから、気をつけなさいよ。癖になるわよ......!
統一された江戸口調。出てくる食材も粋。出てくる人物も粋。これは粋だねぇ!