第伍話『平穏な日』

あの後結局クロノス(省略してクロノ)は俺の家に来る事となった。


(桜は猛反対したが)


別にそれ自体俺は構わないのだが……




————翌朝—————


「――――ん」


俺はゆっくりと体を起こし――———目の前の状況を理解する


「おはよう」


クロノが布団の中から俺を見上げる。


「あ、あぁ、おはよ――——じゃねぇ!!」


「いたっ……」


手刀を再び使うこととなろうとは……


「クロノ‼︎何で俺のベットに居る⁉︎」


「……え?いけなかった?」


のそりと体を起こしたクロノは首をかしげた。

何が悪いのかわかっていないようだ……。

折角クロノの布団ひいてあげたのに。


まぁ、世間知らずなのもしょうがないが。


そう俺は食卓にご飯を並べながら1人考える。


それは置いといて(置いといて良いのか)今日は連休明けの月曜だが……。


クロノコイツどうしよ。


学校に連れて行く訳にも……。


「クロノ、少しお留守番頼めるか?」


「……良いけど」


クロノが頬をぷ〜と少し膨らませた、不満そうだ……。


「ごめんな。クロノを学校に連れて行くわけにはいかないんだよ……」


「……分かってる」


あ、これ大分ご立腹ですわ。


そんな会話を食器をかたずけながらする。


「じゃあ、行ってくるから。家は頼んだ」


「いって……らっしゃい」


その時クロノはニヤッと笑ったがその時の俺はその意味が分からなかった。


後々知った時、桜が同じクラスでは無かった事をとても悔やんだ。


それは————————


「私は……柊 黒廼。今日から、ここで学ぶことになった。

ついで……に、真矢とは……兄妹!」


そう、クロノが俺のクラスに転入してきたのである。

さすがの俺も冷や汗だらり。

完っ全に予想外である。


そのクロノから一言が発せられた瞬間、教室は二つの(正確には三つ)の声が響いた。


「可愛ぃぃぃ!!」女子陣営からの黄色い声。

「こんの裏切り者がぁぁぁ!!」男子からの泣きそうで力強い声。

あとどうでもいいけど……

「あんなクソみたいな奴じゃなく俺の妹になってくれぇぇぇ!!」と訴える変態ども。

……失礼だな。


「はいは~い、授業始めるぞ~」

先生が手を叩きながら騒動を止める。


先生……ナイス!!


「一時限目は黒廼ちゃんの自己紹介で!」


……前言撤回。


「質問がある人‼︎」


俺以外の全員の手が挙がる。正直ビビった。


「西澤君から順番に行こう‼︎」


『サー・イエッサー‼︎』


教室内の声が見事にシンクロ。人間って怖い。


「どこ出身ですか!」


ぎく。またもや冷や汗がたらり。


「憶えて……いません」


教室が一瞬でしん……となった。


西澤は気まずそうに座り先生に目線で助けを求めた。


「え、えっと、次行こうか‼︎」


その後、好きな食べ物やら行ってみたい場所やら一杯質問が飛び交った。


その中でも『僕と付き合ってください』って言ってた奴もいたな……。

2秒くらいで玉砕されてたけど。


そんなこんなで一時限目は何事もなく終了。

このまま何事もなく終わると良いんだが……。(それフラグ)



二時限目は数学だった。


「出来た人言ってね〜」


先生が皆にプリントを配りながら言った。


———数分後


「真矢、できた」


「は?」


嘘だろ?このプリントめっちゃ数あるじゃん。俺まだ半分も終わってないんだけど。


「先生、黒廼が出来たようなんで見てやってください」


クラスの目線が一斉に集まった。


「へ⁉︎あ、はい……」


先生が回答用紙を受け取り、採点をし出す。


スッ、スッと赤マーカーが鳴る音をクラスの俺を含むみんながじーっと見ている。


「ぜ、全問正解……⁉︎」


その瞬間クラスのみんなの手からペンが落ちた音が響いた。


あ、優等生組の目が死んでる。


俺はそんな空気無視してそそくさと回答用紙を埋めていく。


「真矢、私、すごい?」


「あ、あぁ、凄いぞ」


その時、黒廼は素晴らしいほど空気を読まない爆弾を放った。


「頭、撫でて!」


ピキッ、クラスが固まった。当然俺も。


「あ、あぁ……よ、よく頑張ったな……」


なでなで、なでなで……。


「えへへぇ……」


うわぁぁぁぁ!みんなからの目線が!目線が!


……はい、この件で授業が続けられなくなりました。


みんながバタッと倒れ、保健室送りだよ。


う〜ん、アニメみたいにそのまま続かないのね。


現実って難しい。


「……黒廼、帰ろうか」


「うん!帰る!」


うん、可愛い。


帰り際に考える。


う〜ん、実際クロノスって何歳くらいなんだろ。


見た目からしたら12とかなんだけどなぁ……。


「どうしたの?真矢」


「あ、あぁ……何でもないぞ」


あ、流れで頭撫でてしもうた。


くそぅ……可愛いなおい……。



うむぅ……こんな様子じゃあ先が思いやられるなぁ……。
















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