第参話『神々の黄昏』
ラグナロク…確かお爺ちゃんがそんな事を話していた気がする。
神々にとっての終末の日…。
…ってちょっと待って…
要するに『俺がラグナロクを止める』って言う事になるのか⁉︎
「はい、そういう事になりますね」
と、アテナ様はこちらの思考を読んだかのように言った。
「貴方はその素質を持っています、なんて言ったって貴方は神の子なのですから「俺が…神の…子?」
アテナ様はなにを言っているんだ?俺にはしっかりと人間の父と母が…
父と…母…?名前は…何だ?思い…出せない…。
「思い出せないでしょう?あなたの本当の父親はかつてこの地を作り、
管理していた
あぁ、あなたの記憶だとお爺さんの関係として残っているようですね」
俺は膝を地面につき頭を地面に叩きつけた。
しんじられない。俺が神の子だと?そんなのデマカセだ。
俺は正真正銘人間の子だ。だって、そうだろう?
見た目からして人間じゃないか。
全知全能が父親ならおかしい事がいっぱいじゃないか。
そんな爺さんが親なら覚えてるはずだろ…!
「それはゼウス様本人がそういう呪を掛けたのです」
やはりアテナ様は心読んでそう言った。
「一体なんのために?呪なんか掛ける必要ないだろ!」
俺は半分ヤケになって叫んだ。地面には涙の跡が残っている。
「それが有ったんですよ。力が隠せないから…それでは
貴方はそのおじいさんがどうなったか覚えていますか?」
俺は考え込んだ。はっきりとは記憶がない。
しかし、爺さんは俺の目の前で息を引き取ったんだ。
ん…?待てよ…?
あの時、爺さんは何かを言いかけようとした…?
確か…
『お前は儂の…最後の…希望…お主に…これを…授けよう…
これを使って…せか…い…を…』
爺さんはここで息を引き取ったはずだ。
そのとき渡されたのがこの懐中時計…
俺はポケットから懐中時計を取り出す。
その瞬間アテナ様がすごく驚いた表情で俺から距離を置いた。
「そ…それは…」
俺は不思議に思った。たかが懐中時計で何故驚いたのか、と。
「貴方はそれをどこで手に入れたんですか!」
アテナ様が動揺している。何故?
「その懐中時計…いえ…lostMagicを…」
lost…Magic?何だそれは…これはただの懐中時計だろ?
俺はアテナ様がなにを言っているのかが全く理解できない。
「lostMagicとは前回のラグナロクを引き起こすキッカケだったのです…
lostMagicは神界で三つしかない…特殊な魔法なのです。
その力は絶大で世界を一回で破壊できてしまうものです」
あの爺さんそんな凄いものを俺にくれたのか…
「アテナ様…私はこれからどうしたら良いでしょう…」
ふと、自分がこれからどうしたら良いのか気になった。
ここにいるわけにもいかないし…
「貴方にはラグナロクを止めてもらわねばなりません。これを…そちらの世界では『勇者』といったところでしょうか。そして現実世界で学生の続きをしてもらいます。」
な…⁉︎勇者?俺が?そして、学生⁉︎続けるの?
「あの…アテナ様…お言葉ですが…俺は引かれて死んだのでは…?」
確かに俺はあの時引かれた。絶対死んだ、あれは。
「貴方には使いを助けてもらった恩もありますし、そこら辺の治癒はしましょう。
しかも急所を上手く避けているようで、クロノスがやったんでしょう。」
少し気になる表現があったので聞いてみる。
「クロノスがやった?それはどういう事ですか?
クロノスは俺の力の名前ではないのですか?」
これまでずっとクロノスは自分の力と思い込んでいたので気になってしまった。
「えぇ、クロノスだって存在していますよ?あなたに少量の力を貸しているだけです。まぁ、クロノスは自分の時間を早めて姿を消すことができますし、
気付かれないのはしょうがないかと」
納得。さすが時間の始祖。時間関係はお手の物っていうことか。
「では、現実世界に意識を戻しますね…」
そうか、帰らないといけないのか。
「また…来れますかね…」
この世界と別れるのがなんだか惜しくなり、確認をしてみた。
「えぇ…また…近いうちに…」
その時のアテナ様の笑みの本当の意味に気付くことに俺は出来なかったんだ。
そして俺は真実と使命を持って、現実世界へ戻った……。
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